2012年01月27日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約
第四話はこちら
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/4071146.html
五十嵐は、菜々の眼の前に書類を差し出した。
そこには「専任媒介契約」と書いてある。
おっとり型の美樹でさえも「契約書」という文字に対し、少々不安な表情だ。となれば、相手に突っ込みを入れるのはいつもの通り菜々の役割だ。
「契約書の内容について、きちんとご説明いただけませんか。」
「もちろんです。これは媒介契約書というもので、お客様が不動産の売却の依頼を不動産業者にする際の契約です。この契約を結ばないと、宅地建物取引業法上、不動産業者は買主探しのお手伝いができないルールになっています。裏面の約款は国土交通省の標準約款ですからご安心ください。」
「国土交通省が定めたものなんですね」
紙面一杯に細かい文字で書かれた約款を眺めながら美樹がつぶやく。
「そうです。どの不動産業者でも同様のひな形を利用しているはずですよ。まあ、中には勝手に書き換えている業者もいるかもしれませんが、うちは財閥系大手ですから、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ。」
確かに、この媒介契約書は西京不動産販売のロゴが入ったひな形だ。下手に改ざんすることなどないだろう。
菜々は、自分が勤める西京商事と同じグループである西京不動産販売なら、さほど心配しないでもいいだろうと思ってはいるものの、念のため聞いてみた。
「専任というのはどういう意味ですか?」
「専任というのは、弊社だけに売却活動をお任せいただくということです。他の不動産業者さんにも売却活動を依頼できる一般媒介というものもありますが、この場合、弊社としてはお客様の不動産に対して十分な広告宣伝費をかけることができないんです。また、専任媒介ならば弊社の優良なお客様だけをご紹介できます。一般媒介ですとどこの馬の骨か解らない買主さんと取引しなければならないというリスクもあります。ですから、弊社では専任媒介をお勧めしています。」
美樹が頷きながら五十嵐の話を聞いている脇で、菜々は、西京不動産販売だけに売却活動を任せるのはどうかと少々思ったが、西京グループならトラブルになるリスクはないだろうと感じていた。
「藤川様、特にご異論がなければ、こちらにご記名ご捺印ください。それから、契約期間は3ヶ月になりますので、それまでには何とか優良なお客様を見つけます。」
奈々と美樹が書類に記名押印を終えるところで、五十嵐は言った。
「ところで、買主探しのための物件資料作成のために、建物図面や土地の測量図など書類が必要なのですが、お手元にございますか。」
「それならこちらにまとめてありますよ。」
奈々はファイルにとじ込まれた書類を五十嵐に手渡した。
「よろしければ本日こちらをお預かりさせていただき、セールス用の物件資料を早急に作成させてください。物件資料が出来上がりましたら藤川様にお送りしますので。その際に、この媒介契約書に弊社が押印したものを一通ご返送しますので。」
「えっ。今日は媒介契約書にサインしてもらえないんですか。」
契約書なのだから、記名押印は同時にするのが当然だ。
「申し訳ございません。弊社はリスク管理の観点から印鑑の持ち出しが禁止されておりますので、どうかお許しください。実際、セールス活動を行うにしても物件資料が完成しないとできませんし。」
「構わないわよね。奈々。」と姉の美樹が安心しきった顔で微笑んでいる。
「そうだね。お姉ちゃん。じゃ、判りました。」
「それでは、例のチラシのお客様へのご紹介を含め、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」
こう言う五十嵐を奈々と美樹は玄関から見送った。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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2012年01月10日
2012新春 金利放談
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2012新春 金利放談
ミニ小説ばかりアップしていると、「この人は何者?」と思われるかもしれませんので、元銀行員の不動産コンサルタントらしい記事を一つ。
2010年、2011年と、年始に住宅ローン金利の動向について戯言を書きましたが、2012年も戯言を。
金利上昇には、「よい金利上昇」と「悪い金利上昇」というのがあります。
「よい金利上昇」は、経済が上向きになっていく過程の中で金利が上昇するもので、今の日本でそれが実現するためには、昨年のお正月に私が書いたように、
1.アメリカの雇用環境が改善する
2.日本の政局が安定し成長戦略が具体化する
3.ヨーロッパの金融危機が顕在化しない
という3つの要素が必要だと私は考えています。
少なくとも、アメリカの直近の雇用統計では改善が見られますが、2.と3.は全くダメですよね。
したがって、当面「よい金利上昇」は考えられないというのが私の持論です。
だからと言って、このまま超低金利が続くと信じてはいけないと思うのです。
そうです。「悪い金利上昇」の兆しを観察しておく必要があるのです。
本日の日本経済新聞によれば、昨年度は貿易収支が赤字に転落し、数年は赤字が定着するのではないか、とのこと。
所得収支と貿易収支の黒字で、サービス収支、経常移転収支の赤字をカバーし、経常収支の黒字を維持してきた日本ですが、この記事によれば、所得収支も今後は縮小傾向とのことでした。
これは、日本の財政悪化を懸念する金利上昇を促す材料ってことですね。
昨年のお正月に、日本の財政悪化を懸念する金利上昇が発生するとすれば、以下のシナリオが考えられると私は記事に書きました。
1.日本の政局が不安定で、税制改革と社会保障改革がなされず、巨額の財政赤字がこのまま改善しない中で、
2.今後5年程度で経常収支が赤字になり、資金を海外から頼らざるを得ない土壌が出来上がるとともに
3.人口減少と高齢化の進展で、日本の家計の金融資産が減少していくことで、今後10年〜15年程度で国内での国債消化が厳しくなり
4.金利は上昇せざるを得なくなる
先の日経新聞の記事からすると、2.については現実味を帯びてきたということです。
1.は言わずもがなですね。社会保障改革がないままに消費税を増税しただけでは、意味がないわけですから。
もうひとつ、3.の事象を表すものと考えてもよいと思いますが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による日本国債の大量売却。
現在の年金収支は収入約27兆円、支出約35兆円で約8兆円の赤字。この赤字を埋めるために、GPIFが積立金を取り崩して支払っています。GPIFの積立金はその3分の2が日本国債で、その積立額はピークだった平成21年度末が約123兆円、昨年3月で約116兆円、昨年9月で約109兆円にまで減少しています。
社会保障改革がなされない限りは、今後も積立金を取り崩さざるを得ないわけですが、この国債供給圧力の高まりは、国債価格の押し下げ圧力(金利は上昇圧力)になるという可能性を否定できません。
「まだまだ日本の国債は売れてるじゃないか」「海外投資家も買ってるよ」「財政悪化といっても日本政府の純資産は大きいから問題ないよ」という意見も事実だと思うんですが、海外投資家が日本国債を評価しているのは、最悪、日本政府は日本国民にババを引かせるだろうと考えているからなんだと思います。
もし、海外投資家にも火の粉が降りかかるリスクがある、つまり経常収支が赤字になり、日本の財政赤字を埋めるために海外から資金を調達せざるを得なくなったときに、海外投資家が「日本国民だけでなく自分達もババをつかまされる可能性があるのでは?」と考えるようになったら、今のままの低金利状態であり続けるかどうか、ちょっと微妙だと思うのです。
そんなわけで、今年も一言。
目先の金利に目を奪われて住宅ローンを組むというのはやめたほうが良さそうです。
固定金利で返済シミュレーションした上で、冷静に判断することをお勧めします。
住宅ローンは何と言っても長いですから。
<参考>
2010年1月の記事(住宅ローン金利は今後どうなる?)
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/2102549.html
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/2107537.html
2011年1月4日の記事(中古住宅購入 金利上昇の時期は?)
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/3239727.html
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それは、人と不動産が切っても切れない関係にあるからです。
だから当社は
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■本内容については万全を期しておりますが、その内容の全てを保証するもの
ではありません。万が一これらの内容を各人の判断で使用したことにより損害
を被った場合、弊社は一切責任を負いかねます。
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2012年01月09日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第四話 価格査定
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第四話 価格査定
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第四話 価格査定
土曜日の昼下がり、藤川家の呼び鈴が軽やかに鳴った。
「西京不動産販売の五十嵐でございます」
インターフォンに出た藤川菜々は、五十嵐を玄関に招き入れる。
藤川邸の玄関を入ると、モリディアーニだろうか、女性の肖像画が眼前に現れる。続いて眼を上に向けると大きな吹き抜けの空間が広がる。菜々は、五十嵐が玄関の様子を鑑賞するのを少々待ってから、姉の美樹が控えるリビングへ五十嵐を案内した。
五十嵐は美樹と菜々に挨拶を済ますと、レポートを鞄から取り出した。
「さっそくですが、藤川様のご自宅の価格査定をして参りましたので、簡単にご説明させていただきます。」
手渡されたレポートはA4サイズ3枚分だ。五十嵐は15分程度かけて簡単に説明したが、美樹や菜々にとって具には理解できない内容だった。二人に理解できたことは、土地が1億2500万円、建物が0円ということだった。
姉の美樹は、解ったような解らない様な顔で五十嵐の話を聞いている。美樹は、長女とはいえおっとり型で、菜々とすれば少々頼りない面があった。一方の菜々はその逆で、幼いころから何事にも積極的ではっきりと物を言う少々気の強い面のある女性だった。だからこそ、藤川姉妹にとって一大事業となる自宅売却の仕切り役は、菜々が担うのが当然であった。
菜々は、土地の査定額については、自分がインターネットで調べた水準からするとやや高めではないかと感じていた。一方建物については、0円ということはあり得ないと感じた。自宅に残っていた建物請負契約によると、請負金額は3000万円程度だった。築10年だからといって、0円ということはないのではないか。しかも、五十嵐は、今日初めてこの建物を見たにも拘わらず0円と言い切っている。
「土地の値段は納得感があるんですけど、建物が0円というのはどういうことですか?」
五十嵐は答えた。
「一般的な一戸建の規模は30坪程度です。お宅のように50坪の建物となるとかなり大きな規模になりますので、購入する方は限られます。通常、この規模の建物をお買い求めになる方は、それなりのお金持ちでしょうし、そういう方は自分の好きなように建物を建てたがります。つまり大型の中古建物は極めて売りにくいんです。藤川様の建物はとても立派ですが、そういったお金持ちの方々が、この建物を気に入るかどうかは分かりませんし、気に入らなければ逆に解体費がかかるということになります。」
さらに五十嵐は続ける。
「本来、この周辺で一般的に売れる規模である30坪程度の土地の場合、その土地相場は1坪あたり200万円といったところです。藤川様の土地は60坪弱ありますから、規模的には倍の大きさになりますので、1坪あたり200万円より安くなるはずです。しかし、藤川様のご所有土地は立地も環境もよいので、周辺相場よりも少々高めの水準で販売活動をしてみる価値があると考え、今回のような査定結果に致しました。ただし、一定期間の販売活動を経過しても、この水準で買主が見つからない場合には、建売業者などに売却することを検討していただくことになると思います。」
確かに、菜々としても自宅周辺の新築建物はずいぶん小さくなっている気がしていた。自分の家がかなり大きな家であり、昨今の景況感からすれば簡単に売れる建物ではないことは感覚的には理解できた。
とはいえ、元々は「この地域で中古一戸建てを探しているお客様がいます。急いでいますので相場より高く買います!」というチラシを入れてきたのは西京不動産販売なのだ。西京不動産販売の考えではなく、この周辺で相場より高く買うという買主が、自分の物件に対してどのような評価をしてくれるのかをまずは知りたい。もしかすると、その買主は、この土地だけでなく建物も気に入るかもしれないのだ。
「チラシのお客さんはどうなんですか」
と菜々は切りだす。
すると、五十嵐はこう言った。
「チラシのお客様だけでなく弊社の優良顧客に対して、早急に藤川様のご所有不動産をご紹介したいと思っておりますが、法律上、媒介契約を締結してからでないと、セールス活動ができないルールになっています。まずは、この書類にサインをしてほしいのですが。」
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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2011年12月24日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第三話 都合のいいシナリオ
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第三話 都合のいいシナリオ
「もしもし、お電話代わりました。担当の五十嵐と申します。」
「あっ、私、藤川と申します。先日、御社のチラシが投函されてまして、このあたりで一戸建てを探している方がいらっしゃるそうですね。」
「はい、左様でございます。弊社のお客様は桜新町駅が利用できる立地限定で探していらっしゃいます。藤川様はご売却の検討をなさってらっしゃるんですか?」
「まだはっきりと決めたわけじゃないんですけど、場合によっては売ろうかと思ってまして。その方だったらどの程度で買っていただけるのかしらと思って・・・。」
『求むチラシ』で引っかかってきた顧客というのは、仲介業者にとって「必ず売ってくれる客」ということを意味するオイシイ客だ。しかしまずは、藤川という客の所有不動産の所在地を特定し、競合他社に出し抜かれぬよう可及的速やかに物件情報を押さえなければならない。
「それでしたら、ご住所をお聞かせいただけませんか。直ぐに査定して次の土曜日にお伺いしてご説明させていただきますので。」
「判りました。じゃあ、次の土曜日の午後2時にお願いしますね。」
住宅地図を聞いてみると、藤川という客の家は桜新町から5分程度の閑静な住宅地にあるようだ。しかも南道路に面した形のよい敷地で60坪ほどありそうだ。ざっと見積もっても土地だけで1億2千万円程度はするだろう。
とすると、この客から取れる仲介手数料は、ざっと380万円(1億2千万円×3.15%+63千円)だ。
五十嵐は更に頭の中で計算を続ける。
買主も自分でみつければ、買主からさらに380万円、合計で720万円の仕事だ。
待てよ・・・。土地の規模が60坪もある。一般の個人で1億円を超える不動産を買う人は決して多くない。時間をかけて買主を探すより、建売業者に買わせたほうが効率的だ。
建売業者なら9千万円くらいまで価格は下がるが、五十嵐にとっては美味しい話になる。
なぜなら、建売業者が一般個人に対して販売する際にも仲介に入れるからだ。
つまり、藤川という売主から仲介手数料として約290万円(9千万円×3.15%+63千円)、買主となる建売業者からも同額を受け取る。これでまずは580万円。
次にこの土地を買った建売業者は、土地を二つに割って新築建物を建てて販売することになるだろう。1戸あたり8千万円で販売するとすれば、売主となる建売業者からは仲介手数料として約520万円((8千万円×3.15%+63千円)×2戸)と、最終的な買主からも同額を更に獲得できる。この取引で1040万円。
つまり最終的には合計で1620万円の仲介手数料になる。まさに「一粒で二度オイシイ案件」だ。
藤川という客は絶対に逃がしてはならない客だと確信しながら、如何にしてこのシナリオに藤川という客を乗せていくか思案する五十嵐だった。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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2011年12月12日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第二話 西京不動産販売 五十嵐一樹
ミニ小説 〜不動産屋の背信
第二話 西京不動産販売 五十嵐一樹
西京不動産販売は、財閥系西京グループの雄である西京不動産の子会社である。
主に、一般中古住宅の仲介や戸建分譲素地、収益アパートなどの売買仲介を手掛けている会社である。簡単に言えば、売りたい人と買いたい人の仲人業だ。
五十嵐一樹は明月大学卒業後、この就職氷河期をなんとか財閥系列の不動産会社に就職することができた入社5年目社員だ。いわば、仕事にも随分慣れてきた中堅社員というところである。
12月のある日、五十嵐の上司である坪川課長が問いかける。
「五十嵐。今年もだめだったらしいな。」
「何すか?課長。」
「宅建だよ。お前、また不合格だったんだろう。」
「ああ。宅地建物取引主任者試験ですか。しかたないですよ。殆ど勉強してないし。だけど、宅建なんて関係ないでしょ。資格があっても稼げなきゃ意味ないですしね。無駄な資格取得のために時間を割くくらいなら、『求むチラシ』を配ってたほうがいいですよ。」
「まあ、そうだな。資格オタクより稼ぐやつのほうが重宝がられるしな。ただな、ないよりはあったほうがいいぞ。来年は頑張れ。」
五十嵐は、軽くいなしつつ頷いたものの、頭の中では、資格の事など眼中になかった。
この業界では、資格を取ったからといって給料が上がるわけではない。稼いだ仲介手数料に応じてボーナスや給料の多寡が決まる仕組みだ。
だからこそ、常に新しい客、特に売主を獲得するために、『求むチラシ』を担当地域に配りまくる。これが一番効率的なのだ。
『求むチラシ』というのは、「この地域に不動産を探している人がいますので、売却を検討しているなら当社に声を掛けてください」という類のチラシだ。
ちなみに、この手のチラシは、本当に客がいるとは限らない。
ただ、西京グループであれば大手として大々的にテレビCMなども行っていることから、ちょっとでも売却検討している人ならば、大抵の場合、チラシを信用して電話を掛けてくる。
こういう売主を手っ取り早く獲得する最もシンプルな手段が『求むチラシ』だ。
「五十嵐さ〜ん。お客様からお電話です。」
事務の女の子から声がかかる。受話器から聞こえてきたのは若い女性の声だ。
「あのー、私、藤川と申しますが、先日、御社のチラシが入ってまして。。。」
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2011年12月04日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第一話 藤川姉妹
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第一話 藤川姉妹
「もう一年かあ。お父さんが死んでから・・・。」
藤川菜々は姉の美樹にしみじみと語りかけた。
菜々と美樹は、かつては家族四人で過ごしていた家に二人で住んでいる。
その家は、菜々が高校二年生のときに父隆弘が新築した家だったが、母の正子は菜々が大学三年のときに他界、父隆弘も昨年他界した。
世田谷の桜新町駅から程近い閑静な住宅地に建つその家は、延床面積50坪ほどの2階建で、二人にとっては広すぎるものだった。
「菜々。私、思うんだけどね、そろそろ私たち、別々に生活したほうがいいと思うの。前にも相談したけど、この家を売ったほうがいいんじゃないかと思ってるのよ。」
「そうだね。一周忌も終わったことだし、お姉ちゃんもそろそろ結婚だもんね。ちょっと寂しいけど、売ったほうが私たちのためになるかもね。」
姉の美樹は東都信託銀行事務管理部に勤めている。同じ信託銀行の先輩と近いうちに結婚することについては、亡き父隆弘も公認のことだった。
「そういえば、最近、よく不動産屋さんのチラシがポストに入ってくるんだけど・・・」
美樹は菜々に一枚のチラシを見せた。
『この地域で中古一戸建てを探しているお客様がいます。急いでいますので相場より高く買います!』
と大きな目立つ文字で書いてある。
「相場より高く買ってくれるんだ。西京不動産販売三軒茶屋支店っていうことは、私の会社の系列だよ。お姉ちゃん。」
菜々は一部上場の西京商事のLNGチームに所属している。西京不動産販売は旧財閥の西京グループのひとつである西京不動産の子会社だ。
「よく知らない不動産屋さんだとちょっと怖いけど、西京グループなら大手だし安心だと思うわ。ちょっと電話して話を聞いてみない。」
そういって、美樹は菜々に電話をするよう促した。
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2011年11月10日
ミニ小説〜不動産コンサルタントは見た!木造アパート投資実況中継10
ミニ小説
〜不動産コンサルタントは見た!(木造アパート投資実況中継10)
<バックナンバーは末尾にあります>
10.エピローグ
1週間ほどして、田倉事務所からホームインスペクション報告書が届いた。
ホームインスペクターの古田さんが指摘していたことが、写真とともに簡潔にまとめられている。
修繕工事が必要な部分は、屋根防水塗装、外壁修繕および防水工事、雨どい洗浄と階段などの鉄部の錆処理だ。
僕は知り合いの防水工事業者2社に連絡し、工事見積もりをお願いした。
それぞれから見積もりが届く。いずれも200万円程度だ。
僕はインスペクション報告書と両者の工事見積もりを持って、クライアントの小林さんのところに説明に行った。
「建物の躯体はほぼ問題なさそうです。ただ、屋根と外壁は防水工事をしっかりやったほうが良さそうですね。それから、雨どいの洗浄、階段など鉄部の錆のメンテナンスも必須のようです。修繕費用は200万円くらいですね。」
「判りました。じゃあ、買っちゃいましょう。ただし、購入希望金額は変更しますよ。200万円の修繕工事代金を差し引いた4800万円でお願いしますね。修繕は買った後で結構です。田中さん、頑張って交渉してきてくださいね!うまくいったら、あの物件にある『メンバーズクラブ マリリン』でご馳走しますよ! 田中さんはリベンジしなきゃ、ですしね。」
小林さんは、軽い口調でそう言った。
翌日、京橋不動産の松田君のところへ行き、買主である小林さんの意向を伝えに行った。
「松田君、この物件はさほど問題がないことが判ったよ。ただ、屋根の防水、外壁修繕と防水、雨どい洗浄、鉄部の錆処理は最低限実施しておく必要があることが判った。この工事費は複数者に見積もりをしてもらった結果、200万円程度かかることも判った。だから、この修繕費用を売買代金から差し引かせてほしいんだ。工事は購入の後、買主の責任で実施するからさ。」
「200万円ですか・・・。まあ、この程度なら上を説得できると思います。」
「それから、このホームインスペクション報告書を契約締結前に実施する重要事項説明書に添付しようと思う。そして重要事項説明書には、屋根の防水劣化、外壁劣化、雨どいに溜まった土、鉄部の錆が存することを記載する。そうすれば、その部分は売主が負うべき瑕疵担保責任ではなくなるからね。」
「そうでしたね。売主のうちにとっては、そこが一番のポイントでした。早速、上に起案しますね。」
その後、特に揉めることもなく契約条項の調整が終了し、2週間後には売買契約は締結に至った。
今日は「お祝い会」ということで小林さんと一杯やることになっている。
日はすっかり落ちたというのに、蝉がけたたましく鳴く中、僕は小林さんに指定された店、「メンバーズクラブ マリリン」に向かう。
「もしかして、小林さん、この物件が気に入ったというより、ママのことを気に入ってしまったのかも・・・。そんな訳ないか。」と独り言を言いながら、今度こそはジェントルな呑み方をしようと心に決め、僕は歩を進めた。
終わり
(最後までお読みいただきありがとうございました!)
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
<バックナンバー>
2.現地検分
3.クライアント訪問(1)
4.クライアント訪問(2)
5.テナント調査
6.ホームインスペクションって何だろう
7.ホームインスペクション拒否!?
8.ホームインスペクション実施(1)
9.ホームインスペクション実施(2)
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2011年11月01日
ミニ小説〜不動産コンサルタントは見た!木造アパート投資実況中継9
ミニ小説
〜不動産コンサルタントは見た!(木造アパート投資実況中継9)
<バックナンバーは末尾にあります>
9.ホームインスペクション実施(2)
小屋裏(屋根裏)に上がった僕たちが眼にした木造の柱や梁、野地板(屋根板)に染み付いたいくつもの雨染み。普通、雨の日の翌日ならば、多少は湿っているはずだ。
「ん?。雨染み部分にしては、木が乾いてる気がしますよ。」と僕。
「含水率を調べましょう。」古田さんは計測機器を取りだした。
「・・・えー!?含水率13%ですよ。」
雨染み跡がある部分を手当たり次第チェックするものの、どれも13%〜14%なのだ。
ちなみに、建築用材木の場合20%以下がよいとされているため、この建物の部材は極めて優秀な水準ということになる。
古田さんは剥がれかけた断熱材を指差して言う。
「あそこに断熱材が貼ってあるでしょう。昭和50年初めの建物で屋根に断熱材を貼るなんてありえませんから、屋根を葺き替えた可能性がありますね。これらの雨染みは、恐らく屋根を葺き替える前のものだと思いますよ。」
「過去に雨漏りがあっても、現時点で雨漏りがなく、構造部材の木材が十分に乾燥していれば、安心してもいいんですか。」
「大丈夫です。雨が染みだしてこない状態ならば、構造部材の木は十分力を発揮できますから。」
古田さんは続ける。
「ただ、やっぱり古い建物ですし、屋根の塗装が劣化している点や、外壁がボロボロになっている点を考えると、長持ちさせるという意味から、屋根の防水工事や外壁の塗装はしたほうがいいと思いますよ。」
1階の店舗にも許しを得て中を調査する。
1階の天井裏を覗いてみたところ、木造構造体に雨染みは見られるが、いずれも乾燥している。これも、屋根を葺き替える前のもののようだ。
次に、各室内の水平垂直状態を調査するというので、古田さんの跡についていく。
古田さんは、各室内の窓やふすま、ドアや引き戸などの建具をひとつひとつ動かしている。
「これで何かわかるんですか?」
「動きがスムーズでない場合、建物が歪んでいるかもしれないですからね。」
建物が歪む理由はいくつかあるが、経年劣化で床がたわむというようなものから、地盤の半分が沈みこんだ結果、建物が斜めに歪むというようなもの(不同沈下)まで考えられる。
後者が理由で、建物が水平垂直でないということは、建物そのものの荷重のかかり方が不均等になるため、ある一部分に大きな力が加わることになる。
そうなると、そこから劣化が始まってしまったり、ちょっとした地震などで、その部位を中心に大きな損傷を被ったりするリスクがあるのだ。
これが雨漏りと連動して柱などが腐朽すると、大きな損害になる。
古田さんは、水平垂直を精緻に調査できるレーザー計測器を取り出し、さらに調査を進める。
室内に照らし出された赤いレーザーは、建物の柱や天井のラインときれいに合致している。
結果的に、今回は、全く問題ないことが判った。
その後、水道をひねって水を出してみたり、きちんと排水されるかなどをチェックしていく。
これらも特に問題はないようだった。
ただ、雨どいに溜まった土や鉄製の階段のサビなどは指摘事項になったようだ。雨どいに土が溜まっていると雨水がきちんと排水できず、建物内部に水が染み込む原因になるという。
ほっと一息ついた僕を尻目に、眼を皿のようにして設計図書をめくる古田さんがつぶやく。
「建物図面通りにきちんと施工されてますね。きっと建築屋さんがしっかりしたところだったんでしょうね。」
「図面通りでないことなんて、そんなにあるんですか?」
「木造住宅には、図面通りに建築されていない建物が無いわけではないんですよ。だから、木造住宅は品質にばらつきがあると言われているんですよ。図面通りに建てられていれば、殆ど問題はないんですけどね。木造住宅のほうが鉄筋コンクリートよりも地震に弱いといわれてしまうのは、木造建築物の品質のばらつきが原因ともいえるんですよ。」
「なるほど。そもそも、この建物、築34年ですけど、建物図面があっただけでも奇跡ですよね。僕の経験上、築20年程度でも建物図面がないっていうケースは多々ありますもん。」
「そうですね。建物図面を保管しておくことは大切なんですよ。」
古田さんは続ける。
「この建物は、旧建築基準法時代の建物ですから、現在の基準より耐震性は低いけれども、木材のコンディションはとてもいいですね。ですから、維持管理さえきちんとすれば、まだまだ使えると思いますよ。ただ、屋根の塗装、外壁の修繕と防水工事、雨どいに溜まった土の除去、鉄部のサビ除去は必須ですね。」
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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8.ホームインスペクション実施(1)2011年10月24日
ミニ小説〜不動産コンサルタントは見た!(木造アパート投資実況中継8)
ミニ小説
〜不動産コンサルタントは見た!(木造アパート投資実況中継8)
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8.ホームインスペクション実施(1)
京橋不動産の松田君からホームインスペクション実施の了承を得た僕は、直ぐに田倉事務所の丸沢さんに連絡し、ホームインスペクションの依頼をした。
ホームインスペクションの実施日は翌週の水曜日の午後からとなり、担当は古田さんというホームインスペクターらしい。
費用は126,000円で、報告書が届いたら振り込めばよいとのことだった。
思ったより費用はかからないと感じた。
さて、ホームインスペクション実施の日がやってきた。前日は、激しい雨が降っていたが、今日はよく晴れている。
古田さんと名刺交換をしながら、「今日は晴れて良かったですね」と僕は当たり障りのない挨拶をする。
「そうですね。でもね、昨日が雨だったというのが、実はいいんですよ。木造住宅の大敵は、雨漏りなんです。だから、前日が雨だと問題点を発見しやすくていいんですよ。」
古田さんは、そう言いながら、建物の周囲を上から下までじっくり観察している。
「外から見ているだけで、何か解るんですか?」
「建物の基礎や外壁、軒下、屋根など、外観を観察することで、いろいろなサインが出ていないかをチェックするんですよ。基礎や外壁にひび割れがないかとか、軒下に雨漏りの跡がないか、屋根が劣化していないか、というのをまず外観から確認するんです。その上で、室内や床下、小屋裏(屋根裏)を調査して、問題の原因を突き止めるんですよ。ざっと見た感じですけど、基礎は問題なさそうですね。だけど、この物件には壁と軒下に黒っぽい染みが沢山あるでしょう。これはどこからか水分が染み込んできた可能性があるというサインなんですよ。屋根の塗装もかなり劣化しているようですから、雨漏りの可能性大ですね。」
「なんだか、お医者さんの問診みたいですね。」
「ホームインスペクションというのは、まさにかかりつけのお医者さんそのものなんですよ。」
実際、壁のあちこちにひび割れや剥がれた部分が見られる。特に、窓枠の周りは非常に多い。
この建物の外壁にはモルタルが塗られている。モルタルの外壁は、2から3年経過するとひび割れが普通に発生するため、その都度、ひび割れを埋めるなどの修繕を行う必要があるし、5年〜10年に1回くらいは塗装し直ししたほうがよいとされている。しかし、この物件は、まったくこうしたメンテナンスしてこなかったようだ。
モルタルのひび割れや剥がれは、そこから雨水が入り込む原因となる。雨水が入り込んで壁の合板が腐るくらいならなんとでもなるが、構造躯体の柱や梁が濡れ続けるのが一番怖い。だから、こまめに修繕する必要があるのだ。
周囲の観察が終わると、2階の空き部屋へ。
6月というのに、室内は思ったほどジメジメしていない。
30年以上前に建てられた木造住宅は、普通に建築されていれば、ある意味隙間だらけなので、結果的に風通しがよくなり、構造躯体の木が腐朽しづらくなるということもあるらしい。
まずは室内の天井や壁をチェックする。あちこちに水染みがみられる。
「これも雨漏りですかね。」
「間違いないですね。でも、柱には水染みがみられませんから、この部分は問題なさそうですね。この時代の建物は柱がそのまま室内に剥き出しになっているので、構造部材に問題があるかどうか室内に入るとすぐ解るんですよ。」
次に押し入れの上にある点検口を開けて、古田さんと共に小屋裏(屋根裏)へ。
しかし、さすがに小屋裏は蒸せるほどに暑い。染みでる汗を拭いながらライトを照らし、木造構造部分や屋根板などを観察する。予想通り、沢山の雨染みが見られる。
「雨漏りしてたみたいですね。間違いないですよ。」と古田さん。
木造住宅の最大の敵は水分なのだ。木材は水分量が多くなると腐朽しやすくなるし、シロアリ被害にも繋がる。シロアリ被害だけではない。私が実際出会った案件では、雨漏りが継続した結果、通し柱一体が羽蟻の棲家になってしまい、木材がフカフカになってしまっていた事例もあるほどだ。
僕は、恐る恐る雨染みの跡を手で触ってみた。
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5.テナント調査
6.ホームインスペクションって何だろう
7.ホームインスペクション拒否!?
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2011年10月11日
ミニ小説〜不動産コンサルタントは見た!木造アパート投資実況中継7
ミニ小説
〜不動産コンサルタントは見た!(木造アパート投資実況中継7)
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7.ホームインスペクション拒否!?
早速、僕は売主である京橋不動産の松田君のところへ報告に行った。
「僕のクライアントがあの物件をかなり気に入ってくれているんだ。購入希望金額は5000万円だけどね。」
「5000万円ですか。それなら上司を説得できると思います!早速話をあげてみますよ。」
松田君は嬉しそうに応える。
「で、ひとつお願いがあるんだよ。」
松田君は僕の言葉に対し、表情を少しこわばらせている。
僕は、小林さんにサインしてもらった「買受申込書」を松田君に見せながら話を進める。買受申込書とは、売主に対して購入希望金額などを記載した購入申込書のようなものだ。
「要は、契約する前にホームインスペクションを実施させてほしいんだ。ホームインスペクションっていうのは、建物診断のことなんだけどね。」
ところが、松田君は顔をやや曇らせながら言う。
「ホームインスペクションで、何か問題が出てしまったらどうなるんでしょう?」
「修繕しなければならない問題がある場合、協議の上で修繕費用を差し引いて買わせてもらうことになるね。」
「例えば、5000万円以上かかるような問題があったら・・・」
「そりゃ、購入は断念せざるを得ないね。」
「そうなりますよね。本音を言うと、売主としては面倒なことはしたくないんです。ホームインスペクションを実施したがために、知りたくもない問題が見つかってしまったら、その問題を隠して、他の買主に売るわけにもいかないでしょう。場合によっては誰にも売れなくなってしまうかもしれませんし・・・。」
確かに、売主からすれば、自分の物件が荒探しされるのはいやだろうし、何か欠陥が見つかった場合は、知らないふりをして売るわけにもいかない。そうであれば、わざわざ診断などせず、本当に知らないまま売ってしまったほうがいいと考えるのは自然だろう。一方、売主としてそんなスタンスでいいのか?という思いも交錯する。そして何よりも、このままでは話が前に進まない。
さて、どうしたものか。。。
「じゃあ、こうしよう。」と僕は切りだした。
「ホームインスペクションはうちが発注するよ。もちろん費用はうちの負担だよ。うちがホームインスペクションの発注者で費用負担者となるわけだから、診断報告書はうちの財産になるよね。」
「そうなりますね。。。」
「そしてその内容について、うちは御社に開示しない。ホームインスペクションの内容を知り得るのは、うちの会社とうちのクライアントだけだ。」
「はい。。。」
松田君はまだピンと来ていない様子だ。僕は続ける。
「もし、うちのクライアントが買わないと判断した場合、うちとクライアントは御社に対して、ホームインスペクションの内容も開示しないし、買わなかった理由についても一切説明しない。つまり、御社はこの物件の問題点については何ら知り得ない立場になる。」
さらに僕は続ける。
「もし、うちのクライアントが買うと判断し、御社もそれに合意した場合には、ホームインスペクションの内容を御社に開示する。開示した内容は、売買契約前の重要事項説明書に容認事項として記載すれば、瑕疵担保責任(※)の問題から御社は解放されるよね。記載された問題点は隠れた瑕疵にならないから、御社もかなりリスクが減る。だからホームインスペクションだけはやらせてくれよ。」
松田君はやっと僕が言わんとすることを理解したようで、瞳をくりくりさせながらこう言った。
「そうか!何か問題があったとしても、田中さんのお客さんが買わないなら、その問題をうちは知ることはない。もし田中さんのお客さんが買ってくれるなら、ホームインスペクションの結果は全て開示されるから、うちの瑕疵担保責任リスクが殆どなくなるってことですね!」
「その通り!」
「それなら大丈夫だと思います。じゃあ、すぐに調査に取り掛かってください。いいお返事を期待してますよ。」
(※)瑕疵担保責任
売買の対象物に隠れた瑕疵(外から容易に見つけることができない欠陥や不具合)がある場合、売主が買主に対して負う責任のことを言います。
隠れた瑕疵があった場合、買主は売主に対して契約解除や損害賠償請求を行うことができますが、買主が契約の際にこうした瑕疵の存在を知らなかった場合で、かつ、知らなかったことについて買主に落ち度がない場合に限ります。一般的には、雨漏りや建物の構造部分の腐蝕、シロアリの害、給排水管からの漏水などがあります。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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