2012年05月18日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第九話 HSリアルティー畑中翔麻
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第九話 HSリアルティ畑中翔麻
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第九話 HSリアルティー畑中翔麻
HSリアルティーの代表を務める畑中翔麻の携帯が鳴る。
「はい、HSリアルティーの畑中です。ああ、今村さん、お世話になります。」
「ちょっと気になる物件があってね。西京不動産販売のホームページに掲載されている桜新町の物件なんだがね。」
畑中は、大学卒業後、東都信託銀行に入社。10年ほど不動産部門で働き、部門のエースとして活躍後、HSリアルティーを創設した男だ。
東都信託銀行在職時代から、彼は中古住宅取引の世界には多くの問題があると長年感じてきた一人だった。
例えば、中古住宅を買う時は、建物を事前に調査することもなく、建物の状態に問題がないかどうか判らないまま買わなければならないことや、売物件情報がスムーズに購入検討者に流れない仕組み、強引な営業や営業担当者の不勉強によるトラブルなど、問題点が多いと強く感じていた。
それらを改善することをライフワークとしたいという思いで、彼は3年前に一念発起し独立起業したのである。
畑中に電話をしてきた今村は、畑中のそんな考え方に賛同しているクライアントの一人だった。不動産のこととなるといつも畑中に相談を持ちかけている。
今村は、東都海上火災の役員を退任したばかりで、予てより自宅の買換えを検討していた。
今村はこれまで、大手や中堅の不動産会社に自宅探しを依頼してきた。しかし、どの会社からも同じ物件が紹介されることが多く、またインターネットで物件を検索しても、ほぼ物件は重複しており、非公開の特別な物件などは存在しないことを熟知していた。
どの不動産会社を使っても入手できる情報が同じであれば、自分にとって安心できるエージェントを選びたいと思っていたときに、とある案件で畑中と出会い、それ以来、畑中をエージェントとして利用しているのだ。
そして今村は、インターネットを検索しながら自分で気に入った物件を見つけては、畑中に意見を聞くというスタイルを採っている。
「桜新町の一戸建てですか。」
「うん、そうだよ。どうも1週間ほど前に西京のインターネットに掲載されたばかりみたいだ。土地が60坪弱で古家ありとなっている。価格は1億2500万円だよ。西京不動産販売に連絡して、住所を聞いておいてくれ。外から見てみたいから。」
「判りました。それと、いつも通り、価格水準の調査と立地調査をしておきますよ。」
「よろしく頼むよ。」
畑中は、早速、西京不動産販売のホームページをチェックする。
「この物件か。」
そうつぶやくと、レインズと呼ばれる不動産業者しか利用できない物件検索サイトを開いた。
不動産会社が売主と専任媒介契約を締結した場合、その物件を必ずレインズに登録しなければならないことになっている。一般媒介という他の不動産会社にも買主探しを依頼できる契約の場合は、レインズに登録する必要はない。
しかし一般媒介契約は、複数の不動産会社が競合することになるため、競争上、結果としてレインズに登録せざるを得なくなる。
つまり、この世の中に存在するほぼすべて売り物件は、このレインズというサイトに登録されるシステムなのだ。
レインズを検索すると、桜新町の物件が登録されていることが確認できた。しかし、通常は掲載されているはずの物件資料がない。文字情報だけの登録になっている。
「囲い込みか。。。」
畑中はつぶやく。
レインズは、他の業者に売り物件の存在を広く知らしめ、スムーズに買主と売主を結び付けるために国土交通省が指定する指定流通機構が運営しているものだ。
が、敢えて物件資料を登録しないというのは、他の不動産業者から買主の紹介を受けるつもりがないのかもしれない。文字情報だけの登録でも法的には問題はないため、文句を付けるわけにもいかないのだ。
「とりあえず、西京に電話してみるか。。。」
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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不動産は、人に安心と豊かさを与えるものでなければなりません。
それは、人と不動産が切っても切れない関係にあるからです。
だから当社は
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株式会社あゆみリアルティーサービス
東京都中央区京橋1−14−6 ガーデニアビル9階
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■本内容については万全を期しておりますが、その内容の全てを保証するもの
ではありません。万が一これらの内容を各人の判断で使用したことにより損害
を被った場合、弊社は一切責任を負いかねます。
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2012年04月28日
住宅の購入or賃借どっちがお得?
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住宅の購入or賃借どっちがお得?
最近、金利は低いし、住宅価格も手ごろな水準になってきたということもあって、賃借よりは購入したほうがお得、というセールストークをよく聞きます。
不動産屋さんのチラシなどにも、「月々●●円でご購入いただけます」といった文字が踊っています。これらは、最低の変動金利、最長の借入期間で設定した毎月の返済額で表示しているというのがミソです。さらに管理費や固定資産税なども勘案していないため、実際に買った場合の支出はもっと大きくなるケースが非常に多いものです。
さて、そういった「誤魔化しキャッチコピー」は置いておき、購入と賃借でどちらが得なのかをちょっと考えてみましょう。
例えば、毎月の「住居にかかる毎月の支出」を15万円として、35年間生活した場合で考えてみます。
<ケースA(マンション賃借)>
◇毎月の賃料:月額15万円
<ケースB(マンション購入)>
◇毎月の返済額:月額10万円
◇所有コスト:月額5万円(管理費、修繕積立金、固定資産税等)
マンションを所有すると、管理費、修繕積立金、固定資産税等がかかりますので、毎月のローン返済額を15万円とするわけにはいかないのでこのようになります(くれぐれも、毎月の返済額と賃料を比べないでくださいね。)。
このとき、毎月の支出のうち、他人に支払うことになる金額を見てみましょう。
<ケースA(マンション賃借)>
単純に賃料を35年間支払い続けることになりますので、他人に支払うことになる金額は次のようになります。
◇35年分の賃料:6,300万円(15万円×12ヶ月×20年)
⇒6,300万円は全て大家さんのものになりますね。
<ケースB(マンション購入)>
仮に、毎月の返済額10万円で、返済期間35年、固定金利3%、ボーナス返済なし、とした場合、約2,600万円の借入が可能となります。2,600万円の現金を手にして、中古マンションを購入するわけですが、借入れた2,600万円は35年間で返済するので、このお金は他人のものになるわけではありません。単に借りたものを返すだけですね。
他人に支払うのは、35年間にわたって支払う金利と、管理費、修繕積立金、固定資産税等になります。そうすると、他人に支払うお金は約3,700万円となります。
◇金利:1,600万円
⇒これは銀行のものになります。
◇所有コスト:2,100万円(5万円×12ヶ月×35年)
⇒これは、管理会社、管理組合、市町村のものになります。
さて、このとき、賃借と購入、どちらがお得と感じますか?
<他人に支払うことになるお金>
◇賃借:6,300万円
◇購入:3,700万円
これだけみると、絶対に購入のほうがお得ですね。賃借も購入も同じ品質レベルのマンションに住めるとした場合、ますますそう思えてきます。賃借の場合は、35年経過後も、毎月15万円の支払いを継続しなければならない上に、資産は持てないままです。
一方、購入は、ローンの返済が完了してしまえば、毎月5万円の支出のみで、同じ場所に住むことができます。さらに、マンションという資産も持っています。そして、購入の時期が早ければ早いほど、他人に支払うお金は少なくなりますね(賃借の期間が短くなるから)。
しかし、もし、資産として所有したマンションの価値が大きく下がったらどうなるでしょう。
<参考記事>
中古マンション 「価値の目減り率」と「賢い購入のタイミング」
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/1729005.html
仮に、2,600万円で買ったマンションが、半値になってしまったら、3,700万円を他人に支払った上に、1,300万円が泡と消えるわけですから、実質的には5,000万円の流出となります。
35年経って、区分所有者の合意形成ができず十分な維持管理ができないままのマンションとなってしまった場合、売り出しても買い手が付かない、つまり「価値ゼロ」となることもあり得ないわけではありません。もちろん、買い手が付かなくても管理費や固定資産税などは支払い続けなければなりません。
ですから、「購入のほうが100%お得!」とは必ずしも言い切れないのです。
強いて言えば、購入のメリットは、返済が終わった段階で、管理費や固定資産税を支払い続ければ「そこに住み続けることができる権利が確保される」という安心感があるということでしょう。
マンションなどの自宅を購入する場合、単に賃借より購入がお得な気がするといって購入するのは、あまりお勧めできないのではないかと思っています。住宅を購入するということは、そこに住み続けることができる権利を購入する、という程度のものと考え、「購入する意味」「そこに住まう意義」をきちんと考えることが大切なのかもしれません。
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2012年04月25日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第八話 販売開始
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第八話 販売開始
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第八話 販売開始
<第一話から第七話までのあらすじ>
一年ほど前に、父隆弘を亡くし、姉妹二人きりとなった姉の藤川美樹と妹の菜々。
二人きりで生活するには広すぎる桜新町の一戸建を売却しようと思っていたところに、「この地域で相場より高く買う客がいる」という西京不動産販売のチラシが投函される。
藤川姉妹は、西京不動産販売の担当者である五十嵐からの価格査定報告を受け、専任媒介契約を結ぶ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
金曜日の夜、五十嵐は約束通り藤川姉妹の自宅へ訪問した。
「こんばんは。遅い時間にすみません。しかも金曜日の夜だというのにお時間を頂くことになりまして、本当に申し訳ありません。明朝の新聞折込チラシで大々的に広告しますので、どうしても今日中にご説明しておきたくて。」
「いいんですよ。」と姉の美樹。
「まずは、先日お借りした図面はお返ししますね。それから、本日付けで契約となる専任媒介契約書の1通をお返しします。」
五十嵐は続ける。
「専任媒介契約の媒介期間は今日から3ヶ月なので、なんとかその間に良いお客さんを探します。まずは、こちらの新聞折込チラシを明日土曜の朝刊で配布します。」
新聞に折り込まれるというチラシはカラー刷りで、表側の紙面全体に藤川姉妹の所有不動産が美しく掲載されている。裏面には他の売り物件がいくつか掲載されていた。
「それから、弊社のホームページにも掲載します。最近は、ホームページを経由した買主さんからの問い合わせが増えていますので、かなりの集客が期待できると思います。また、リアルタイムで何人くらいの方がこの物件をクリックしたか、資料請求をしてきたかも判りますので、販売戦略のアドバイスも的確に行うことができるんですよ。」
姉の美樹は感心しながら頷いている。
一方、奈々はといえば、何かが引っかかっている表情を醸し出していた。もともと自分達が西京不動産販売に売却の依頼をしたのは、『この地域で中古一戸建てを探しているお客様がいます。急いでいますので相場より高く買います!』というチラシを投函してきたからだ。
「新聞折込チラシはいいんですけれど、急いで探しているという買主さんはどうなったんですか?」
「ああ、そのお客さんですか。媒介契約の日付は今日なので、その方にお話しするのはまさにこれからです。明日にはそのお客さんにご連絡してみますね。」
五十嵐はよどみなく回答したが、奈々にとってはどうも腑に落ちない。急いでいるお客がいるなら、新聞折込チラシやホームページへの掲載云々ではなく、まずはその買主の話をするのが筋だと感じていたからだ。
五十嵐は特に他意もない表情をしながらも、「実はそんな都合のよい客はいない」ということを悟らせぬよう平静を装っていた。
もちろん、この地域で探しているお客がいないわけではないし、桜新町限定とまでは言わないにせよ、沿線で探してはいる買主は少なからずいる。だから、例のチラシが全くの嘘とういことではない。
また、買主は一般のエンドユーザーだけではない。建売業者も買主ターゲットのひとつではある。建売業者の場合、一般のエンドユーザーが購入する価格より安くなってしまうが、建売業者の中ではかなりの高値で買うという客もいる。
五十嵐はそんなことを思いながら、口を開く。
「いずれにせよ、そのお客様の他にも弊社には良いお客様が多くいらっしゃいますので、明日から頑張ってセールスさせていただきますよ。」
美樹は相変わらずニコニコ頷いている。
一方の奈々は、まだどこか不安な気持ちがどこかに残っているような気がした。
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2012年03月29日
ホームインスペクション(住宅診断)のすすめ
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ホームインスペクション(住宅診断)のすすめ
弊社は、中古住宅売買のコンサルティング仲介を行う際、契約前にホームインスペクション(住宅診断)を実施するようお客様にお勧めしています。
特に、2500万円以上の取引価格になる場合、ホームインスペクション費用を弊社が実質的に負担する方法も採用し、弊社以外の第三者からホームインスペクション会社を選定していただいています。
これは、お客様に以下のようなメリットがあるからです。
【買主の場合】
◆建物に欠陥や重大な不具合がないかどうかを、契約前に知ることができる。
◆建物の劣化状況や修繕すべき箇所を契約締結前に知ることができる。
【売主の場合】
◆ホームインスペクションが徐々に浸透しつつある中で、建物の状態をオープンにして売り出せば、買主に安心感を与え、他の競合物件と差別化を図ることができる。
◆建物の劣化状況や問題点を開示した上で契約を結ぶことで、瑕疵担保責任(※)のリスクを小さくできる。
(※)瑕疵担保責任
売買の対象物に隠れた瑕疵(外から容易に見つけることができない欠陥や不具合)がある場合、売主が買主に対して負う責任のことを言います。
隠れた瑕疵があった場合、買主は売主に対して契約解除や損害賠償請求を行うことができますが、買主が契約の際にこうした瑕疵の存在を知らなかった場合で、かつ、知らなかったことについて買主に落ち度がない場合に限ります。一般的には、雨漏りや建物の構造部分の腐蝕、シロアリの害、給排水管からの漏水などがあります。
契約前にホームインスペクションのお願いをすると、不動産屋さんから「面倒なことをしてくれるなよ」と言われることは多々ありますが、他に購入を検討している方がいなければ、しぶしぶではあるものの、ホームインスペクションを受けてくれるものです。
もちろん、「ホームインスペクションなんて面倒なことをせずに買う前提で検討している方がいますよ」と言い返されることもありますが、本当に買主が競合してしまうような「超人気物件」は極々僅かですし、本当に競合する買主がいるかどうかは分かりません。
実際に、ホームインスペクションを契約前に実施するという条件で「買受申込書」を出してみると、実は競合する買主は存在せず、すんなり進むケースが多いものです。
売主にホームインスペクションをお勧めするときには、「自分の家を粗探しされるようで嫌だ」という感覚を抱く方は非常に多いですし、「とんでもない欠陥があった場合、想定している売却価格が大幅に下がるのではないか」と心配される方も多いです。
とはいえ、調査してみると、ちょっとした修繕費用で済むものが多いですし、仮に多少の費用がかかる「外壁や屋根の劣化」があったとしても、一定の期間が経過した建物であれば、競合する殆どの中古建物も同様の状態であることが非常に多いため、価格面で不利になるということは、これまで全くありませんでした。
もちろん、ホームインスペクションの結果、重大な欠陥が見つかれば価格に大きな影響を及ぼしますが、売った後に重大な欠陥が発覚した場合は、かなり面倒なことになります。
過去に、ちょっと怪しいなあと思われる物件の所有者さんにホームインスペクションをお願いしたにも関わらず、ご納得いただけず、そのまま取引した結果、構造材の木が腐食が発見され、ウン百万円の修繕費用を売主さんが負担するということになった事案もあります。
ホームインスペクションは、売主さんと買主さんの両方が気持ちよく、スムーズに取引をするために必要な手続きなんですね。
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2012年03月18日
失敗しない中古住宅選び
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失敗しない中古住宅選び
昨年末から3月11日まで、国土交通省の既存住宅流通活性化に関する実証実験で、僕は中古住宅選び全般に関してアドバイスする専門家として、日経BP社さんが集めたモニターさん達に様々なアドバイスをしてきました。
そこで、感じたことをブログに記録しておこうと思います。
日本国内では、住宅を購入するというイベントは一生に1回から2回程度しかないというのが大勢です。そんな環境で、中古住宅を購入しようというわけですから、殆どの方は中古住宅を購入することが初めてだったりするわけです。
今回、何人ものモニターさんとお会いしましたが、「何から始めたらよいか分からない」「中古を検討しているけれど、見えない情報が分からないままなのが不安だ」という方が非常に多かったのです。
確かに、現在の中古住宅流通市場では、各種ウェブサイトや物件資料に掲載されている情報のみで良さそうな物件を選び、実際に物件を見学して買うか買わないかを判断するしかありません。不安なのは当然だろうなあと思います。
そういう状況の中で、僕が今回の実証実験のミニセミナーや個別相談でお話した必要最低限の検討ステップをご案内します。
(1)何のために買うのかという理念や拘りの整理
(2)買換えを含めた資金調達方法と理想的な購入予算の策定
(3)上記2点を踏まえたウェブ上あるいは資料上での見学候補物件の選定
(4)物件見学
(5)見えない情報の収集と分析
(6)物件購入手続きの詳細チェックと確認
(7)売買契約
「(1)何のために買うのかという理念や拘りの整理」をせずに、なんとなく走り始めてしまうのはとても危険です。これを整理しないということは、建物の基礎固めをせずに建築してしまうようなものです。
次に「(2)買換えを含めた資金調達方法と理想的な購入予算の策定」ですが、これをすっとばして物件を見に行ってしまうのも問題です。新築でも中古でも販売担当者は売りたくて仕方ないわけですから、簡単にその気にさせられてしまい、無理な予算で購入してしまうことも多々あります。冷静に身の丈にあった予算を決めなければなりません。
ここまできちんとできていれば、気ままに(3)(4)を実行してもいいんです。
そして、「欲しい」と思う物件がある程度絞り込まれたら、「見えない情報の収集と分析」を行います。現在の中古住宅流通の問題はここにあります。そもそもこういった情報が開示されていません。また、これらの見えない情報の収集と分析ができる仲介エージェントが少ないのです。不安な点があって質問したとしても、仲介業者さんたちにはノウハウがありませんし、売りたくて仕方ないので、何となくはぐらかされてしまうことが多いのだと思います。
僕がモニターさん達にお話した主な調査すべきポイントは次のことです。
◇価格の妥当性
◇地域分析(地盤・地歴・周辺施設や環境・都市計画の方向性等)
◇ホームインスペクション(建物コンディションと長期的維持修繕費用の見積もり)
◇マンションの場合には管理状況の情報収集と分析
◇リフォームの可能性や耐震補強費用の調査
どうも、このあたりの項目が、中古住宅流通の課題になっているような気がします。逆に言うと、これらの情報をきちんと開示している売り物件は他の物件に対し差別化され競争力のある売り物件となるのだと思います。
欧米先進国では、5回〜7回も買換えをするというケースが多々あるそうで、また新築住宅よりも中古住宅の売買件数のほうが多く、ざっくり新築3に対して中古7という割合で取引されているようです。一方、日本ではそれが全く逆転しています。欧米先進国ではホームインスペクション(住宅診断)は当たり前だそうで、だからこそ新築よりも取引量が多いんだろうなあと思います。
地震大国とはいえ、耐震性は世界最高水準の建築技術を持つ日本。既に建築された建物の技術水準だって国際的にみたら大変なものです。
きっと、欧米先進国のように、今まで見せてこなかった情報をどんどんオープンにしていくことで、素敵な中古住宅市場になるんじゃないかなあと思いながら、今日も頑張る僕でありました。。。![]()
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2012年03月15日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第七話 案件会議
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第七話 案件会議
西京不動産販売三軒茶屋支店では、毎週月曜日の朝から店内の支店長以下、営業担当者で先週の活動報告、今週の活動予定、案件報告などをおこなう。
五十嵐は、藤川姉妹が所有する桜新町の案件資料が参加者に行き渡るのを確認し、説明を始めた。
「この物件は、敷地面積60坪弱程度の住宅用地です。建物は築10年ですが、この規模になると、買主ターゲットはかなりの高所得者層に限定されますし、そういった所得者層の場合、新たに自分好みの建物を建てたいというケースが殆どだと思います。よって、建物付きではありますが、土地売り前提でセールスを開始して下さい。」
別の担当者から意見がでる。
「高所得者といっても、うちの店に来ている1億円以上の買い情報は数えるほどしかなかったと思いますよ。その顧客がだめだったらどうするんですか。早めに建売業者に情報提供しておいたほうがいいんじゃないですか。」
会議に参加している担当者たちの視線が五十嵐に集まる。
五十嵐以外の担当者達も、一般のユーザーでこの物件が決まるとは思っていない。できれば自分達も手っ取り早く建売業者にこの物件を紹介して、成果を上げるチャンスを得たいのだ。
「恐らく現実的な買主ターゲットは建売業者になるでしょう。大雄ホーム、みかどハウス、栄建設は私が持ち込みます。それ以外の建売業者に持ち込みたい場合には、私に一度ご相談ください。」
会議に参加している担当者たちから嘆息が漏れる。この地域で本命と目される建売業者が全て五十嵐に押さえられてしまっているからだ。
五十嵐からすれば、同じ店内とはいえ、同僚に買主を紹介されてしまえば自分の成績は半減してしまう。歩合の度合いが高いがゆえに、出来る限り自分だけで案件をまとめ上げたいというインセンティブが強く働くのだ。
五十嵐は続ける。
「仰る通り、エンドユーザーで購入できる顧客は極めて少ないと思いますが、店内のエンドユーザーにまずは持ち込んでください。ちなみに、今週金曜日に専任媒介を結びます。その日のうちに当社ホームページに物件を掲載し、翌日の土曜の朝刊に折り込みチラシを入れる予定です。レインズへの登録は来週の金曜日になります。それまでの間に、可能性がありそうな一般エンドユーザーに徹底的にセールスしておいてください。」
レインズへ登録すれば、即座にこの物件が首都圏にある不動産業者すべてに知らされることになる。その前に購入してくれそうな買主候補全てにセールスしておけば、他の不動産業者に買主を探索される可能性は低くなる。
五十嵐の説明が終わったところで、五十嵐の後輩である高橋が質問する。
「ところで、レインズに他の不動産業者から問合せがあった場合はどうしますか?」
「原則として商談中と回答してください。」
「買主を連れて案内したいと言われてもですか?」
「商談中で構いません。」
五十嵐は言い切った。
高橋はいつものこととはいえ、「商談中」という言葉にどこかむなしさを感じていた。
他の不動産業者が、この物件に興味を持つ買主を連れてこようとしているにも関わらず、西京不動産販売が勝手に売主と買主が繋がることを遮断してしまうからだ。
高橋はこの行為が、本当によいことなのかどうか常に疑問に思っていが、背に腹は代えられないとも感じていたし、どの不動産業者も行っている行為と聞かされていた。
高橋はこれ以上、何も言うことができなかった。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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2012年02月16日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第六話 策略
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第六話 策略
事務所に戻った五十嵐に、上司の坪川課長が声をかける。
「どうだった、例の桜新町の案件は。」
「ちゃんと専任取ってきましたよ。」
「媒介価格はいくらだったけ?」
「媒介価格は1億2500万円にしときましたよ。ただ、1億円を超える案件ですから、買主とすれば自分で気に入った建物を建てたいでしょうね。そうなると、解体費まで考えなければなりませんから、ちょっと高いもしれませんね。まあ、他の業者に専任媒介契約を取られるわけにもいきませんから、多少強気の値付けにしときましたよ。」
「なるほどな。じゃあまずは、うちの支店内で持っている買主にセールスだな。」
「そうですね。」
五十嵐は、坪川課長との会話を終わらせると、藤川姉妹から入手した書類を手に後輩の高橋に声を掛けた。
「この書類でセールス用の物件概要書を作っておいてくれ。明日の日曜日中にな。月曜の案件会議でみんなに出すからさ。それと、次の土曜日の朝刊に折り込みチラシも入れるから、その準備もしておいてくれよな。」
「わかりました。ところで、この案件、専任ですよね。レインズ登録はどうしますか?」
「媒介契約の日付は次の金曜日になるから、翌週の金曜日に登録しといてくれ。」
専任媒介契約というのは、ひとつの仲介業者が独占的にその売り物件情報のセールスを委託されるものだ。
この契約を仲介業者が締結した場合、その物件が速やかに市場に流通するよう国土交通省が指定する東日本不動産流通機構というところが運営する不動産業者専用の物件検索サイトに、媒介契約日から7日以内に登録する義務がある。これは宅地建物取引業法できちんと定められている。
このサイトは通称レインズと呼ばれており、これに物件を登録した段階で首都圏に存在する約65700事業所の仲介業者に売り物件の存在を知らせることができる。
売り物件の存在を知った他の仲介業者は、自分の手持ちの買主に物件を紹介したり、自社のホームページに物件を掲載したりしてその物件の買主探しをする。したがって、一社で買主探しをするより、極めて広範囲にかつ効率的に買主探しができるというものだ。
しかし、レインズに登録し他の仲介業者が買主を見つけくれた場合、五十嵐が受け取る手数料は売主の藤川姉妹からのみとなる。
五十嵐からすれば、自分で直接の買主を見つければ、売主である藤川姉妹からだけでなく、買主からも手数料を受け取ることができる。
したがって、レインズへの登録日をぎりぎりまで引き延ばし、その間に自分の手元にある買主で取引をまとめてしまいたいのだ。
五十嵐は高橋に指示を続ける。
「それから、大雄ホーム、みかどハウス、栄建設には必ず物件を紹介しておいてくれ。それで、いくらなら買えるか聞いといてくれ。」
大雄ホーム、みかどハウス、栄建設は用賀から三軒茶屋界隈で勢いのある建売業者だ。
藤川姉妹が所有する物件は1億円を超える物件であり、一般のエンドユーザーが簡単に出てこない可能性が高い。仮に、一般のエンドユーザーが出てこないようであれば、たとえ売却価格が安くなったとしても、このような不動産業者への売却も視野に入ってくるのだ。
一通りの指示が終わると、五十嵐は藤川姉妹とのアポイントのために電話に手を伸ばした。
「もしもし、西京の五十嵐でございます。先ほどはどうもありがとうございました。次の金曜日の夜ですが、お時間があればお伺いさせてください。お預かりした書類もお返しさせていただきます。それから押印した媒介契約もお持ちしますので。その際に、藤川様のお宅の売却方法についてもご説明させていただきますね。」
アポイントを取った五十嵐は、ひと仕事終えたような笑みを浮かべ、家路についた。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。![]()
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■本内容については万全を期しておりますが、その内容の全てを保証するもの
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を被った場合、弊社は一切責任を負いかねます。
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2012年01月27日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約
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五十嵐は、菜々の眼の前に書類を差し出した。
そこには「専任媒介契約」と書いてある。
おっとり型の美樹でさえも「契約書」という文字に対し、少々不安な表情だ。となれば、相手に突っ込みを入れるのはいつもの通り菜々の役割だ。
「契約書の内容について、きちんとご説明いただけませんか。」
「もちろんです。これは媒介契約書というもので、お客様が不動産の売却の依頼を不動産業者にする際の契約です。この契約を結ばないと、宅地建物取引業法上、不動産業者は買主探しのお手伝いができないルールになっています。裏面の約款は国土交通省の標準約款ですからご安心ください。」
「国土交通省が定めたものなんですね」
紙面一杯に細かい文字で書かれた約款を眺めながら美樹がつぶやく。
「そうです。どの不動産業者でも同様のひな形を利用しているはずですよ。まあ、中には勝手に書き換えている業者もいるかもしれませんが、うちは財閥系大手ですから、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ。」
確かに、この媒介契約書は西京不動産販売のロゴが入ったひな形だ。下手に改ざんすることなどないだろう。
菜々は、自分が勤める西京商事と同じグループである西京不動産販売なら、さほど心配しないでもいいだろうと思ってはいるものの、念のため聞いてみた。
「専任というのはどういう意味ですか?」
「専任というのは、弊社だけに売却活動をお任せいただくということです。他の不動産業者さんにも売却活動を依頼できる一般媒介というものもありますが、この場合、弊社としてはお客様の不動産に対して十分な広告宣伝費をかけることができないんです。また、専任媒介ならば弊社の優良なお客様だけをご紹介できます。一般媒介ですとどこの馬の骨か解らない買主さんと取引しなければならないというリスクもあります。ですから、弊社では専任媒介をお勧めしています。」
美樹が頷きながら五十嵐の話を聞いている脇で、菜々は、西京不動産販売だけに売却活動を任せるのはどうかと少々思ったが、西京グループならトラブルになるリスクはないだろうと感じていた。
「藤川様、特にご異論がなければ、こちらにご記名ご捺印ください。それから、契約期間は3ヶ月になりますので、それまでには何とか優良なお客様を見つけます。」
奈々と美樹が書類に記名押印を終えるところで、五十嵐は言った。
「ところで、買主探しのための物件資料作成のために、建物図面や土地の測量図など書類が必要なのですが、お手元にございますか。」
「それならこちらにまとめてありますよ。」
奈々はファイルにとじ込まれた書類を五十嵐に手渡した。
「よろしければ本日こちらをお預かりさせていただき、セールス用の物件資料を早急に作成させてください。物件資料が出来上がりましたら藤川様にお届けしますので。その際に、この媒介契約書に弊社が押印したものを一通をお持ちしますね。」
「えっ。今日は媒介契約書にサインしてもらえないんですか。」
契約書なのだから、記名押印は同時にするのが当然だ。
「申し訳ございません。弊社はリスク管理の観点から印鑑の持ち出しが禁止されておりますので、どうかお許しください。実際、セールス活動を行うにしても物件資料が完成しないとできませんし。」
「構わないわよね。奈々。」と姉の美樹が安心しきった顔で微笑んでいる。
「そうだね。お姉ちゃん。じゃ、判りました。」
「それでは、例のチラシのお客様へのご紹介を含め、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」
こう言う五十嵐を奈々と美樹は玄関から見送った。
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2012年01月10日
2012新春 金利放談
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2012新春 金利放談
ミニ小説ばかりアップしていると、「この人は何者?」と思われるかもしれませんので、元銀行員の不動産コンサルタントらしい記事を一つ。
2010年、2011年と、年始に住宅ローン金利の動向について戯言を書きましたが、2012年も戯言を。
金利上昇には、「よい金利上昇」と「悪い金利上昇」というのがあります。
「よい金利上昇」は、経済が上向きになっていく過程の中で金利が上昇するもので、今の日本でそれが実現するためには、昨年のお正月に私が書いたように、
1.アメリカの雇用環境が改善する
2.日本の政局が安定し成長戦略が具体化する
3.ヨーロッパの金融危機が顕在化しない
という3つの要素が必要だと私は考えています。
少なくとも、アメリカの直近の雇用統計では改善が見られますが、2.と3.は全くダメですよね。
したがって、当面「よい金利上昇」は考えられないというのが私の持論です。
だからと言って、このまま超低金利が続くと信じてはいけないと思うのです。
そうです。「悪い金利上昇」の兆しを観察しておく必要があるのです。
本日の日本経済新聞によれば、昨年度は貿易収支が赤字に転落し、数年は赤字が定着するのではないか、とのこと。
所得収支と貿易収支の黒字で、サービス収支、経常移転収支の赤字をカバーし、経常収支の黒字を維持してきた日本ですが、この記事によれば、所得収支も今後は縮小傾向とのことでした。
これは、日本の財政悪化を懸念する金利上昇を促す材料ってことですね。
昨年のお正月に、日本の財政悪化を懸念する金利上昇が発生するとすれば、以下のシナリオが考えられると私は記事に書きました。
1.日本の政局が不安定で、税制改革と社会保障改革がなされず、巨額の財政赤字がこのまま改善しない中で、
2.今後5年程度で経常収支が赤字になり、資金を海外から頼らざるを得ない土壌が出来上がるとともに
3.人口減少と高齢化の進展で、日本の家計の金融資産が減少していくことで、今後10年〜15年程度で国内での国債消化が厳しくなり
4.金利は上昇せざるを得なくなる
先の日経新聞の記事からすると、2.については現実味を帯びてきたということです。
1.は言わずもがなですね。社会保障改革がないままに消費税を増税しただけでは、意味がないわけですから。
もうひとつ、3.の事象を表すものと考えてもよいと思いますが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による日本国債の大量売却。
現在の年金収支は収入約27兆円、支出約35兆円で約8兆円の赤字。この赤字を埋めるために、GPIFが積立金を取り崩して支払っています。GPIFの積立金はその3分の2が日本国債で、その積立額はピークだった平成21年度末が約123兆円、昨年3月で約116兆円、昨年9月で約109兆円にまで減少しています。
社会保障改革がなされない限りは、今後も積立金を取り崩さざるを得ないわけですが、この国債供給圧力の高まりは、国債価格の押し下げ圧力(金利は上昇圧力)になるという可能性を否定できません。
「まだまだ日本の国債は売れてるじゃないか」「海外投資家も買ってるよ」「財政悪化といっても日本政府の純資産は大きいから問題ないよ」という意見も事実だと思うんですが、海外投資家が日本国債を評価しているのは、最悪、日本政府は日本国民にババを引かせるだろうと考えているからなんだと思います。
もし、海外投資家にも火の粉が降りかかるリスクがある、つまり経常収支が赤字になり、日本の財政赤字を埋めるために海外から資金を調達せざるを得なくなったときに、海外投資家が「日本国民だけでなく自分達もババをつかまされる可能性があるのでは?」と考えるようになったら、今のままの低金利状態であり続けるかどうか、ちょっと微妙だと思うのです。
そんなわけで、今年も一言。
目先の金利に目を奪われて住宅ローンを組むというのはやめたほうが良さそうです。
固定金利で返済シミュレーションした上で、冷静に判断することをお勧めします。
住宅ローンは何と言っても長いですから。
<参考>
2010年1月の記事(住宅ローン金利は今後どうなる?)
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/2102549.html
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/2107537.html
2011年1月4日の記事(中古住宅購入 金利上昇の時期は?)
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/archives/3239727.html![]()
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2012年01月09日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第四話 価格査定
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第四話 価格査定
土曜日の昼下がり、藤川家の呼び鈴が軽やかに鳴った。
「西京不動産販売の五十嵐でございます」
インターフォンに出た藤川菜々は、五十嵐を玄関に招き入れる。
藤川邸の玄関を入ると、モリディアーニだろうか、女性の肖像画が眼前に現れる。続いて眼を上に向けると大きな吹き抜けの空間が広がる。菜々は、五十嵐が玄関の様子を鑑賞するのを少々待ってから、姉の美樹が控えるリビングへ五十嵐を案内した。
五十嵐は美樹と菜々に挨拶を済ますと、レポートを鞄から取り出した。
「さっそくですが、藤川様のご自宅の価格査定をして参りましたので、簡単にご説明させていただきます。」
手渡されたレポートはA4サイズ3枚分だ。五十嵐は15分程度かけて簡単に説明したが、美樹や菜々にとって具には理解できない内容だった。二人に理解できたことは、土地が1億2500万円、建物が0円ということだった。
姉の美樹は、解ったような解らない様な顔で五十嵐の話を聞いている。美樹は、長女とはいえおっとり型で、菜々とすれば少々頼りない面があった。一方の菜々はその逆で、幼いころから何事にも積極的ではっきりと物を言う少々気の強い面のある女性だった。だからこそ、藤川姉妹にとって一大事業となる自宅売却の仕切り役は、菜々が担うのが当然であった。
菜々は、土地の査定額については、自分がインターネットで調べた水準からするとやや高めではないかと感じていた。一方建物については、0円ということはあり得ないと感じた。自宅に残っていた建物請負契約によると、請負金額は3000万円程度だった。築10年だからといって、0円ということはないのではないか。しかも、五十嵐は、今日初めてこの建物を見たにも拘わらず0円と言い切っている。
「土地の値段は納得感があるんですけど、建物が0円というのはどういうことですか?」
五十嵐は答えた。
「一般的な一戸建の規模は30坪程度です。お宅のように50坪の建物となるとかなり大きな規模になりますので、購入する方は限られます。通常、この規模の建物をお買い求めになる方は、それなりのお金持ちでしょうし、そういう方は自分の好きなように建物を建てたがります。つまり大型の中古建物は極めて売りにくいんです。藤川様の建物はとても立派ですが、そういったお金持ちの方々が、この建物を気に入るかどうかは分かりませんし、気に入らなければ逆に解体費がかかるということになります。」
さらに五十嵐は続ける。
「本来、この周辺で一般的に売れる規模である30坪程度の土地の場合、その土地相場は1坪あたり200万円といったところです。藤川様の土地は60坪弱ありますから、規模的には倍の大きさになりますので、1坪あたり200万円より安くなるはずです。しかし、藤川様のご所有土地は立地も環境もよいので、周辺相場よりも少々高めの水準で販売活動をしてみる価値があると考え、今回のような査定結果に致しました。ただし、一定期間の販売活動を経過しても、この水準で買主が見つからない場合には、建売業者などに売却することを検討していただくことになると思います。」
確かに、菜々としても自宅周辺の新築建物はずいぶん小さくなっている気がしていた。自分の家がかなり大きな家であり、昨今の景況感からすれば簡単に売れる建物ではないことは感覚的には理解できた。
とはいえ、元々は「この地域で中古一戸建てを探しているお客様がいます。急いでいますので相場より高く買います!」というチラシを入れてきたのは西京不動産販売なのだ。西京不動産販売の考えではなく、この周辺で相場より高く買うという買主が、自分の物件に対してどのような評価をしてくれるのかをまずは知りたい。もしかすると、その買主は、この土地だけでなく建物も気に入るかもしれないのだ。
「チラシのお客さんはどうなんですか」
と菜々は切りだす。
すると、五十嵐はこう言った。
「チラシのお客様だけでなく弊社の優良顧客に対して、早急に藤川様のご所有不動産をご紹介したいと思っておりますが、法律上、媒介契約を締結してからでないと、セールス活動ができないルールになっています。まずは、この書類にサインをしてほしいのですが。」
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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不動産は、人に安心と豊かさを与えるものでなければなりません。
それは、人と不動産が切っても切れない関係にあるからです。
だから当社は
「不動産を通じて豊で安心な社会を実現すること」を
目的として事業を展開します。
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■本内容については万全を期しておりますが、その内容の全てを保証するもの
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