2012年10月22日
ミニ小説〜不動産屋の背信 好評連載中
ミニ小説 〜不動産屋の背信 好評連載中
<あらすじ>
桜新町にある自宅を売ろうとしている藤川姉妹。
そこに大手仲介会社の西京不動産販売 五十嵐一樹が入り込む。
五十嵐は専任媒介契約を締結し買主探しを始めるが、最も仲介手数料を稼げる建売業者への売却を目論んでいた。
そこに、仲介業者HSリアルティー代表の畑中が現れる。畑中の顧客である今村が藤川姉妹の桜新町を気に入っているためだ。
売主の藤川姉妹、買主として競合する建売業者と今村。そして売主と買主の狭間で激しい戦いを繰り広げる仲介業者 西京不動産販売とHSリアルティー。
家の売り買いにおいて、しばしば起こる事象を当事者それぞれの立場で描き出す。
家を売ろうと思っている方、家を買おうと思っている方にとって、知っておくべき不動産仲介業界の姿を赤裸々に語るストーリー。
第二十一話は間もなくアップ予定!
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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それは、人と不動産が切っても切れない関係にあるからです。
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<運営会社>
ホームインスペクション(住宅診断)付き中古住宅・マンションの売却・購入
株式会社あゆみリアルティーサービス
東京都中央区京橋1−14−6 ガーデニアビル9階
〒104-0031 TEL:03-6228-7937
Email:tanaka@ayumi-ltd.com
■本内容については万全を期しておりますが、その内容の全てを保証するもの
ではありません。万が一これらの内容を各人の判断で使用したことにより損害
を被った場合、弊社は一切責任を負いかねます。
2009-2012(C)Ayumi Realty Service All Rights Reserved.
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2012年10月15日
中古マンション購入セミナー(無料) 開講します!
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「中古マンションを買おう」と思い始めたら、まずは、インターネットで物件を検索したり、不動産屋さんに行って情報を収集したりしますよね。
次に、物件資料に載っている売却希望金額や間取り、物件の場所、管理費や修繕積立金といったことをチェックしながら、不動産屋さんと一緒に物件をいくつか見学しているうちに、だんだんテンションが上がってきます。
「住宅ローンは大丈夫かなあ」と思っていると、
「今お支払いになっている賃料とローン返済額は殆ど変わらないですよー」なんて言われて、またその気になって・・・
こんなふうに、なんとなく流れのままに買ってしまうケースが多いんです。
でも、中古マンションを買うにあたって、皆さんが本当に知りたいことって何でしょうか?
そう、「そのマンションに安心して長く住むことができるか」ってことですよね。
これを最低限チェックするためには、
◆一生涯のキャッシュフローシミュレーション
◆建物の劣化状況
◆マンション管理の状況
◆修繕積立金の増額予測
◆周辺地域環境や地盤の状況・・・
といったことをきちんと調べる必要があります。
でも、こうしたことは、物件資料や売買契約前の実施される重要事項説明ではほとんど明らかにされませんし、不動産屋さんに聞いても(彼らも分からないことが多いので)明快な回答をもらえることは極めて少ないのです。
そこで、これらの事項について、少しでも自分でチェックできるよう、皆さんにそのノウハウをご提供しようと思います。
講師は私、あゆみリアルティーサービスの代表 田中歩が務めます。
私は、昨年末から本年3月にかけて、国土交通省が日経BP社に委託して実施された「既存住宅流通活性化に関する実証実験」に専門家として参画し、現在の中古住宅流通の問題点や改善案を進言するとともに、実証実験にモニターとして参加された多くの中古住宅購入予定者の方々に様々なアドバイスを行うとともに、中古住宅購入セミナーを実施してきました。
今回は、このときのセミナーを簡単に纏めた形で、皆様にご説明させていただこうと思っています。
開講期間 10月24日(水)〜12月14日(金)まで
受講場所 あゆみリアルティーサービス本社事務所
東京都中央区京橋1-14-6ガーデニアビル9階
(出張講座については、別途ご相談となります)
ご予約 末尾記載の電話あるいはメールにてお申し込みください。
セミナーの時間は約2時間です。
ご予約の際、お好きな日時をいくつかご指定ください。予約状況等に鑑みて調整致します。
なお、一日一組までの受付と致します。
(ご参考)
あゆみリアルティーサービス会社概要および代表プロフィール
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2012年10月12日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第二十話 覚悟
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第二十話 覚悟
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第二十話 覚悟
翌朝の8時30分。
この時間帯の地下鉄半蔵門線大手町駅はスーツ姿の群衆でごった返す。その群衆は一斉に大手町や丸の内の大型ビル群に吸い込まれていくのだ。
藤川姉妹の長女である美樹もその群衆に呑まれながら地下通路を抜け、東都信託銀行本社ビルへ足を進めていた。
美樹は自分の席につくとパソコンを立ち上げ、社内イントラネットを起動する。不動産部に所属する同期の三上典子に連絡するためだ。
「もしもし、典子?ご無沙汰。」
「あー美樹、ご無沙汰―。どうしたの。朝から私に電話なんて。」
「うん、畑中翔麻さんっていう人、どんな人か知りたくて・・・」
「ちょー有名人だよ。」
「どんな人なの?」
「美樹、うちのイケメン社員と婚約してるっていうのになーに?まずいんじゃない?」
「ちがうよ、典子。実はね、うちを売ろうと思ってるんだけど、今、西京不動産販売にお願いしてるのよ。東都不動産販売にお願いすべきだったのかもしれないけど、子会社だから社内でバレバレになるし、なんかそういうのもいやだったしね。」
「そうなんだ。で、なんで畑中さんなの?」
「うん、その畑中さんがね、うちの家が欲しいっていう買主さんを見つけてくれたらしいんだけど、なんだかよく分からないの。」
「わからないって?」
「畑中さんもその買主さんもね、うちの家を見に来てくれたこともないのに、買受申込書っていう書類を西京不動産販売に送ってきたのよ。」
「なるほど。物件も見ていないのに買受申込書ね。。。」
「どういうこと。」
「解らないけど、西京不動産販売はね、美樹から手数料をとるだけじゃなくて、自分の連れてきた買主からも手数料をとりたいのよ。だから、畑中さんが連れてきた買主とは取引したくないの。だって、畑中さんが連れてきた買主は畑中さんに手数料を払うんだから。そうすると西京は美樹からしか手数料が貰えないでしょ。だから、西京不動産販売は、畑中さんに美樹の家を見たいというお客さんがいるって言われても、美樹達には伝えないのよ。」
「でも、買受申込書を西京に送って来たのよ。」
「だから、そうでもしないと美樹達に会えないでしょ。物件も見れないじゃない。よほど欲しいんだと思うよ。その買主さん。少なくとも畑中さんは、買うつもりのない人を使って買受証明書を西京に出すような人じゃないよ。」
「そっか。そんなことってあるんだ。」
「あんまりないとは思うけどね。希にあるって聞くよ。」
「で、畑中さんて、どんな人なの?」
「凄い人だよ。将来は不動産部門を担う人物になるだろうって言われるくらいの実績を挙げてたし、後輩の私たちも本当にお世話になったんだ。正義感が強くて、お客さんからの受けもよくて、いまでも信託時代のお客さんには畑中ファンがいるって話だしね。だけど、うちの信託にいたんじゃ自分のやりたいことができないって言って退職して、自分で起業したんだ。」
「やりたいことって?」
「中古住宅の取引をもっと透明にしたいって言ってたよ。」
「そうなんだあ。」
「直接、畑中さんに電話してみたら。東都の後輩として連絡すればいいじゃない。三上から聞いて連絡しましたって言ってもらってもいいよ。」
「ありがとう、典子。ちょっと考えてみるね。また連絡するね。」
「うん、じゃね。」
時計の針は9時15分を過ぎている。
美樹は慌てて妹の奈々に連絡する。
「あっ、奈々。なんか凄い人みたいよ。畑中さんて。東都信託の不動産部門でも優秀で有名だったみたい。それで決して変な人じゃないって言ってた。でも・・・」
「なに、お姉ちゃん?」
「9500万円で買ってくれるかもしれない建売業者さんの話がなくなってしまうかもしれないのよね。畑中さんのお客さんが買ってくれればいいけど、どうなるか判らないし。。。どうしたらいいと思う?奈々。」
「おねえちゃん、直ぐに畑中さんの会社に電話して、話を聞いてもらえない。まだ10時までには時間はあるわ。畑中さんが変な人じゃないことが判ったんだから、あとは買主がどんな人で何を考えているか確認するしかないよ。」
「でも、仕事中よ。」
「何言ってるのよ。トイレに行くふりして電話すればいいじゃない!」
「そ、そうよね。分かったわ。やってみる。」
美樹が腕時計に目をやると、既に時計の針は9時30分を指していた。
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2012年10月02日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第十九話 二者択一
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十九話 二者択一
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十九話 二者択一
五十嵐は坪川課長との打合せを終えると、その日のうちに売主である藤川姉妹との面談の約束を取り付けた。
五十嵐が藤川邸の応接に腰かけ、姉妹に説明を始めた時には夜9時を回っていた。
「今日は突然申し訳ありませんでした。早急にご報告したいことが二点ありまして。」
「何かあったんですか?」
「まずは、前回のご面談時にお話した件です。建売業者が藤川様のご所有不動産どの程度で買えるかということをヒアリンングしてきました。」
「確か、8千万円台の半ばくらいと仰ってましたね。」
「はい。大抵の建売業者はその程度なら購入したいと言っていましたが、9千万円なら何とかなるというところが出てきました。大雄ホームという地元で最も力のある建売業者さんです。しかも、もうひと押しで価格を上乗せできそうな感じです。」
「最低でも9千万円台には乗せてもらいたわね。奈々。」と姉の美樹。
奈々としても、一般のユーザーが出てこない環境にあるなら、当初価格である1億2500万円に拘ることはできないことは解っていたし、9千万円台半ば程度になれば、売却してもよいのではないかと思い始めていた。
奈々は五十嵐に質問する。
「どの程度価格が上がりそうなんですか?」
「そうですね。200万円〜300万円程度なら可能だと思います。500万円まで上乗せしてもらえるかどうかは、やってみないと分りません。ただ、9500万円なら必ず売りますとお約束いただければ、ぐっと可能性は高まると思います。」
「悪い話じゃないわね。奈々。そう思わない?」
奈々は、美樹の言葉に対して一呼吸置いて考えた。確かに悪い話ではないだろう。無理して一般のユーザーを探したところで、いつまでたっても売れないというのでは意味がない。ただ、今すぐに判断すべきかどうかが判らなかった。しかも、今日は大事な話が二つあるというのだから。
「そうだね。お姉ちゃん。ちょっと考えてみたほうがいいかもしれないね。それで、もうひとつのお話っていうのは何なんですか?」
五十嵐は少々顔をこわばらせながら話をし始める。
「実は、よく判らない筋の業者から買付証明書が送られてきました。」
そう言って、HSリアルティーから送られてきた買付証明書の写しを姉妹に差し出した。
「えっ!?1億2500万円で買ってくれるんですか!このお話、私たちの希望通りじゃないですか!」
と美樹が興奮気味に声を上げる。
「よく見てください。いろいろ条件が付いてるんです。まず住宅診断を事前にしたいと言っています。診断した結果、問題があれば、売買金額を下げさせてもらいたいとも書いてあります。しかも、この買主はまだこちらの物件を見たこともない。そんな状態で希望価格通りで買うなんて判断を普通の人ができるとは思えないんです。しかも、この買主を連れてきたのはHSリアルティーという不動産業者で、どのような素性かよくわからない相手なんです。」
確かに、まだ建物すら見学していない状態で、こんな紙を出せるというのもおかしな話だし、住宅診断とやらで難癖をつけて値段を下げてくる可能性は極めて高いと奈々は思った。しかし、1億2500万円という金額がそこには書いてある以上、実際に会って話を聞いてみたいという衝動に駆られていた。
「藤川様、弊社としては、先にお話した大雄ホームをお勧めしたいと考えています。この買付証明の買主も不動産業者も素性が判りませんし、このような買付証明を出してくるということは、強引な方々である可能性があります。そういう相手と取引することは、西京としてお勧めしません。仮にこの買主と契約したとしても、売った後に建物のここに問題があったから直せというような文句をあれこれ付けてくることも考えられます。大雄ホームであれば、弊社との取引実績も多くありますし、買った後は一切文句を言わないという約束を契約条件にすることもできますから安心です。」
「なんだか怖いね。変な人だったら困るわ。。。」
美樹はいつものように心を右往左往させているようだ。
もちろん奈々も、こんな話を聞かされると、いくら希望価格で買ってもらえる可能性があるからと言って、この話に軽々しく飛び乗ることはできないと感じていた。
「五十嵐さん、HSリアルティーの方とはお話されたんですよね。どんな感じの方だったんですか?」
「電話だけなので何とも言えないです。ただ、かなり強引な感じでした。関わると面倒かもしれません。」
「ウェブサイトでHSリアルティーを調べてみました?」
「いえ、調べていません。ホームページを見たところで、何が判るということでもないと思いますので。」
奈々は五十嵐の話を聞くと手元のスマホを取り、グーグルでHSリアルティーを検索してみた。
画面にごく一般的な不動産屋のホームページが現れる。企業概要に代表者のプロフィールがあり、そこには見たことがある文字が並んでいる。
1997年 京葉義塾大学経済学部卒、東都信託銀行入社。不動産部を経て、2011年 HSリアルティーを設立。
「お姉ちゃん、HSリアルティーの畑中って社長、東都信託銀行にいた人みたいよ。97年入社みたいだけど、知らない?」
「うーん、よくわからないわ。うちの不動産部門の人なら知ってると思うけど・・・」
「明日、会社で聞いてみてよ。そうすれば変な人かどうか解るじゃない。」
このやりとりを聞いていた五十嵐は慌てて言葉をはさむ。
「ちょっと待ってください。あまり時間がないんですよ。大雄ホームも、別の物件を検討しながら藤川様の不動産を検討して頂いていますので、早く回答をしないと折角の話がなくなってしまうかもしれないんです。9500万円なら売ると今ここで決めていただくくらいのスピード感でないと、どうなるか判りませんよ。」
奈々はすかさず切り返す。
「今ここで決めないといけないんですか? 明日の午前中、いや10時まででいいので待ってもらうことはできませんか?明日の10時なら、左程影響はないでしょう。もう既に夜10時を回ってるんだし、その建売業者さんだって、今この時間、五十嵐さんからの回答を待っているというわけではないでしょう?」
「まあそうですけれど。。。でも必ず10時にはどうするか決めてご連絡してください。それ以上は待てませんからね。お願しますよ。」
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2012年09月27日
不動産を通じて豊かで安心な社会を実現する
不動産を通じて豊かで安心な社会を実現する
「不動産を通じて豊かで安心な社会を実現する」というセンテンスは、僕の会社の理念だ。
今回、木賃デベロップメントというチームを組成し、遊休化したアパートを再生する事業を始めることになった。
このチームでいろいろ議論を重ねていく中で、僕が目指しているものが、今さらながらだけど、なんとなく整理できた気がする。
かつては、高い生活水準を手にすることが是とされてきた。でもきっとこれからは、上質な経験をすることが求められる時代になるだろう。
だから僕は、「物質的な豊かさ」や「贅沢」というキーワードでなく、「幸せ」や「再生」といったキーワードで新たな価値を創造していきたいと考えている。
たとえば、新築を買うことが全てと考えている人がまだまだ多いこの時代ではあるが、新築住宅を買うことを無理に押しつけず、オンボロでも味わいのある中古住宅を購入して自分なりにカスタマイズすることや、賃貸でも金太郎飴のような空間を供給し続けるのではなく、もっとその地域に生活する住まい手が楽しめる空間とか仕組みや仕掛けを考えていきたい。
もちろん、今住んでいる場所や地域で、新たな「住まい方」という価値を造り出すためのお手伝いだって素敵だと思う。これまでの都市開発とは異なる、都市再生的なお手伝いといったものだ。
こういった活動を進めていくに当たって大きな障害のひとつとなるのが、不動産業界に残っている悪しき商習慣とか近代化されていない取引ルールや実務、業界に残る既得権、あるいは不動産税制といったものだ。これを解消するにはかなりのエネルギーが必要だけど、これができなければ市場は活性化しないままだし、僕の目的は達成できない。
僕はこんなことを、自分の持てるスキル・ノウハウを使いながら、志を一にする仲間達とともにやっていきたい。
そしてその活動を通して世の中をちょっとだけでもいいから良くしていき、次世代に繋げていきたいのだ。
そしてこれが、僕の生活の糧であると同時に、趣味でありライフワークなのだ。
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2012年09月11日
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十八話 上司の判断
ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十八話 上司の判断
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十八話 上司の判断
(第十七話はこちら)
「高橋、ちょっと一緒に来い!」
HSリアルティーの畑中からの電話を切った五十嵐は、舌打ちしながら高橋に声をかけると、上司である坪川課長のもとへ足を進めた。
「坪川課長、桜新町の件なんですが、ちょっと面倒なことになりそうなんです。」
「どうした?」
「売主がやっと、建売業者の買い取り価格水準で納得しつつある状況にあるんですが、変な横やりが入りまして・・・」
「横やりって?」
「HSリアルティーっていうよくわからない業者が客付けしてきまして、こんな買付証明書を送ってきたんですよ。高橋がHSリアルティーに所在地を教えてしまったがために・・・」
五十嵐は、その横でこわばって立っている高橋を睨みながらそう言った。
坪川は、そんなことには気づかずに、黙って例の買付証明書を読んでいる。
◆希望価格 1億2500万円(土地・建物価格は別途協議)
◆契約予定日 平成24年○月△日 手付金1000万円
◆決済予定日 契約予定日より1ヶ月後
◆その他条件
・買主は、現在お話を進めている別の買主が存すること、そ
の買主が優先交渉権を持つことを了承します。
・契約前に、建物を見学すること、ホームインスペクション
(住宅診断)を実施することを条件とします。
・ホームインスペクションの結果、修繕に大幅な費用がかか
る場合は、売買金額の減額についてご相談させていただく
場合があります。
・融資条件なし。
五十嵐は、坪川が買付証明書を一読するのを待って口を開く。
「坪川課長、しかもこの買主、HSリアルティーによると、売主に自分の思いのたけを手紙に書いて直接送ると言っているんです。ちょっと普通じゃない買主ですよ。こんな強引なことを言う買主はうちとしても取引できないと思うんです。」
「ほう。うちがこの買付証明書を売主に見せないんじゃないかと思ってるんだな。ちょっと気を付けたほうがいいかもしれんなあ。ところで、この業者と買主からは、何度か建物を見たいという問合せがあったんじゃないか?」
「はい、確かにありました。でも、案件会議でも言った通り、商談中と言うように決めさせてもらいましたんで、建物を見せてはいません。そもそも、どこの馬の骨かわからない業者や買主に、うちの売主を紹介できないですよ。それに、建売業者に売ることで、うちが両手(※)を取り、さらにその建売業者が一般ユーザーに販売するときにも仲介に入ることができれば、うちの手数料を最も大きくできますし。」と五十嵐。
(※)両手とは、売主と買主の間に1社の仲介業者が介在し、双方から手数料を取ること。もしHSリアルティーもこの取引に介在するとなると、西京は売主からしか手数料を取ることができなくなってしまう。
「なるほど。担当者としては正解だな。」
五十嵐は、『担当者としては』という意味を量りかねていたが、黙って坪川の話を聞き続けた。
「ホームインスペクションが条件なんだな。この仲介業者と買主、かなり先進的というか、よく勉強していると思うぞ。ちょっとその辺の仲介業者とは違うかもしれんぞ。」
「どういうことですか?」
「ホームインスペクションは、国土交通省がかなり力を入れ始めているんだ。中古住宅の流通を活性化させるために必要なものとして、注目を浴びつつあるんだよ。」
坪川は続ける。
「恐らく、買主は、うちが商談中といって無理にこの桜新町の物件を見せないようにしているんじゃないかと疑っている可能性があるな。買主が手紙を出すかどうかは判らんけど、万が一届いてしまったらトラブルになるぞ。」
「でも・・・」
「五十嵐さあ、とりあえず、この買付証明を売主に見せて説明してこいよ。もし売主がこの買付証明書を見て、こういう買主とは取引したくないと判断させればお前の勝ちだよ。そうしたら当初の予定通りに進めればいい。仮にそうでない判断を売主がするなら、売主の言うとおりに進めるしかないだろう。」
「解りました。売主には、西京としてはこういう買主をお勧めしたくないとしっかり説明した上で判断してもらいます。」
「まあ、あんまり無理すんなよ。それから高橋、住所の件だが、主担当は五十嵐なんだから、五十嵐から確認をとってから動け。五十嵐のシナリオもあるんだからな。」
「はい。。。」
この一連の行為は、売主に対する背信行為だ。高橋は、そう思う自分の気持ちを押し殺しながら、返事をした。
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2012年08月07日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第十七話 風雲急を告ぐ
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十七話 風雲急を告ぐ
HSリアルティーの畑中は、今村との打合せを終えると直ぐに西京不動産販売の五十嵐あてに買付証明書をファクシミリで送信し、その日の夕刻、五十嵐あてに連絡をした。
「HSリアルティーの畑中と申しますが、桜新町1億2500万円の物件ご担当の五十嵐さんをお願します。」
しばらくすると、五十嵐が電話口に出てきた。
「もしもし、五十嵐と申します。」
「HSリアルティーの畑中と申します。先日、ご担当の桜新町は間もなくご契約予定だと伺ったのですが、弊社のお客様がどうしても自分の意思を売主様にお伝えしたいと仰るので、買付証明書を作成することに致しました。不躾ながら、先ほど五十嵐さんあてにファクシミリでお送りしたところです。」
「見ましたよ。買付証明書。いくら売主希望価格で買うといっても、あんな変な条件がついた買付証明書なんて、何の証明にもならないでしょう。こっちはもう契約間近なんですよ。今さら余計なことをしないでくれませんか。」
「仰る通りだと思います。でも、どうしても売主さんに気持ちを伝えたいというお客様のお心をご理解頂けないでしょうか。もちろん、契約に向けて御社がお手続きを進めている買主さんを最優先にして頂くことが大前提です。そういう内容の買付証明書とさせていただきました。御社で進めている買主さんが万一契約できない状況になった場合に、弊社のお客様にお声掛けいただければいいんです。売主さんや御社にとっては、万が一の場合の保険としてお考えいただけないかと思っているんです。」
「意味は判りましたけど、こんな奇異な書類、売主さんにお見せできないですよ。そう思いませんか?」
「確かに、買付証明と言いながら、様々な条件がついているのは奇異に映ると思います。でも、物件を見学させて頂けない以上、やむを得なかったんです。弊社のお客様は、外からこの物件を何度もご覧になるほど恋い焦がれています。その気持ちをご所有者様にお伝えすべく、直接お手紙を書こうともしていらっしゃいます。もちろん、契約間近のお相手さんがいらっしゃることを十分に理解していますので、御社で進めている取引を壊そうなんて思ってはいません。」
「直接手紙を出すですって!とんでもない。絶対にそんなことさせないでください。」
「もちろん、私だって、そんなことはしないように諭しているところです。それで今回、この買付証明書を出しましょうという話になったんです。とはいえ、弊社のお客様からすれば、売主さんや貴社に迷惑がかかる行為だとは全く思っていないんです。今いらっしゃる買主さんで進めて頂くことに何ら異議申し立てをするものでもありませんし、単に万が一の場合は声をかけてくださいねということを伝えるだけですから。ですから手紙を止められるかどうかは・・・」
「畑中さん、お宅のお客様はとんでもなく強引なやり方をされる人物ですね。ちょっと普通の属性の方ではないんじゃないかと疑ってしまいますよ。そういう方だとうちは絶対に受けられませんよ。」
「いえ、とんでもない。このお客様は東都海上火災の元役員ですよ。属性としてはピカピカですよ。」
五十嵐はしばらく黙っていたが、一言答えた。
「お話は判りました。しかし、このようなケースはまずないので、上司の判断を仰がせてください。」
畑中は、五十嵐が何を考えているか、ここまでのやりとりである程度読めていた。
もし、今進めている買主が、売主の希望する価格、あるいはそれに近い価格であれば、買付証明書を売主に見せることを拒否しないはずだ。
また、手紙は絶対に出させたくない、ということは、買付証明書を売主に見せるつもりがないことの証左だ。
ということは、かなり安い金額の買主で纏めようとしているか、まだ買主がいないということもありそうだ。
上司の判断を仰ぐといのは、本当かもしれないが、時間稼ぎという可能性もある。つまり、時間を稼いで、今進めている買主で契約させてしまうという方針かもしれない。
「是非、買付証明書を売主さんにお渡しいただけるようお取り計らいをお願します。」
そう畑中は返した。そして釘を刺すように付けくわえた。
「ただ、お手紙を止めるということは保証できませんので、万が一そのようになった場合はご容赦ください。」
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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それは、人と不動産が切っても切れない関係にあるからです。
だから当社は
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ではありません。万が一これらの内容を各人の判断で使用したことにより損害
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2012年07月28日
僕が公認ホームインスペクター資格試験を受験した訳(ver.H24)
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僕が公認ホームインスペクター資格試験を受験した訳(ver.H24)
このタイトルで昨年8月にブログ記事を書きましたが、今年もまた筆をとっちゃいます。
日本ホームインスペクターズ協会の公認ホームインスペクター資格試験も今年で4回目。
(9月15日申込締切、11月4日試験実施、詳細はこちら http://www.jshi.org/industry/2012/index.php )
公認ホームインスペクターというのは住宅診断士のこと。公認ホームインスペクターは、住宅全体の劣化状況や結果の有無を目視でチェックして、メンテナンスすべき箇所やその時期、おおよその費用などを「第三者としての立場」でアドバイスする専門家です。
僕は2009年の第1回試験を受験、(なんとか)合格させていただき、こともあろうに、同協会の広報委員、いえかるて委員にも首を突っ込んでいます。
ところで今回も、
1.仲介業者の僕が公認ホームインスペクター資格試験を受験した訳
2.公認ホームインスペクターになってみて良かったこと
についてお話ししようと思います。
1.仲介業者の僕が公認ホームインスペクター資格試験を受験した訳
中古マンションや中古戸建の物件資料は、ご存知の通り「マイソク」レベルのものが中心ですよね。
中古住宅を買う人は、最低限の情報しか書かれていない物件資料と現地を見るだけで、購入するかしないか判断しなければならないけれど、買主の立場からすれば、「欠陥住宅じゃないか」「あとどれくらい住める?」「維持修繕の費用はどの程度?」といったことが判ったほうが安心して購入できるはず。
仲介業務に携わるなら、こういう点についても知見をもった人材が市場から評価されるようになるはずだ!と考え、受験に至ったわけです。
で、実際は・・・
残念ながら、ホームインスペクションはまださほど浸透しているわけではありません。
ホームインスペクション付きでないと、中古住宅は絶対買わないという環境にもまだなっていませんし、ホームインスペクション付きの物件のほうが必ず高く売れるというマーケットにもなっていません。
ただ、昨年以降、大手流通を含め、複数社がいろいろなアドバイスをもらいに来ているとの話も多々聞かれますし、国土交通省の不動産流通活性化フォーラムにおいても、「ホームインスペクション」という言葉が沢山出てくるようになっています。
私が受験したころに比べれば、随分ホームインスペクションが認識されるようになってきたし、クリティカルマス(普及率が一気にアップする臨界点)への到達も近い将来かもしれないと最近は思うようになりました。
その時には、先行者利益があるに違いない!・・・なんて思ってたりします。
2.公認ホームインスペクターになってみて良かったこと
仲介とホームインスペクションを同時に行うと第三者性が担保されないと思っているので、私はホームインスペクターとしての仕事はしていません。
ただ、勉強したことや、実際にホームインスペクターさん達と現場に同行したりしているうちに、パッと見でここはチェックしたほうが良さそうということを(ある程度)指摘できるようになりましたので、お客さんの評価はかなり高くなりました。
正直言って、ホームインスペクターになったからと言って、がんがん儲かるという状況にはありませんが、お客さんからお客さんを紹介してもらいやすくなったのは事実としてあるので、案件は増えてます。
そして、一番よかったこと。(今年もやっぱりこれだね。思うことは!)
日本ホームインスペクターズ協会のメンバーがとっても素敵なこと。
長嶋さんや庄島さん、大西さん達だけじゃありません。みんなとっても素敵です。少しでも不動産と人の関係がよくなるようにというアイデンティティが共有されている。だからといって堅苦しくなく、和気あいあいと活動している。
他の理事さんたちや広報委員、いえかるて委員メンバーたちと、あるいはこれをきっかけに繋がりを持つこととなった住宅系ライターさん、某住宅総合研究所の所長さん、都市開発プランナーさんやかっこいいリノベーションを企画する設計士さんなんかも交えて、夜な夜な呑んで議論したり、プライベートなことを語り合ったり、ビジネスのヒントを出し合ったり、サザン縛りでカラオケ熱唱したり?・・・。
こういう繋がりで新しいビジネスをひねり出したりなんてこともどんどん出てきています。
これがたまらなくいいんだよなぁ。そう、何物にも代えがたい財産だって思っています。同じ想いを持っている人たちとどんどん繋がっていけるのも素敵なことだと思ってます。
是非、ご興味ある方は受験してみてください!そして、一緒に楽しく活動しませんか。
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2012年07月19日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第十六話 二番手の買付証明書
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十六話 二番手の買付証明書
ちょうど五十嵐が大雄ホームと打合せをしている頃、HSリアルティーの畑中は、桜新町を購入したがっている今村と打合せをしていた。
畑中は、西京不動産販売から、『数週間以内に契約することになると思いますので、諦めてください』と言われたことを今村に既に伝えていた。
だが、今村はどうも納得がいかないようで、何かいい手はないかと畑中の事務所を訪れていた。
「畑中君さあ、なんとか西京不動産販売さんと話ができないだろうか・・・。既に別の買主がいるとは言え、自分の思いを伝えないままで終わってしまうのは、何とも忍びないんだよね。」
「今村さん、なんだか一目ぼれした女性に恋い焦がれた青年みたいな感じですねぇ。」
「そんな感じかもな・・・」
「正攻法じゃ無理でしょうね。彼女はもう婚約すると仲人が言ってるんですから。」
「正攻法じゃない方法ってどんなもんなんだい?」
「あまりこういう手は使いたくないんですが、今村さんにもご協力いただかないとできないんですよ。」
今村は身を乗り出して畑中の話に食いついてきた。
「二番手で構わないという前提で、売主宛てに買付証明書を出しましょう。」
「買付証明書ってあれか。買主が『この物件をこういう条件で買います』って売主あて、あるいは売側の仲介業者あてに出す紙のことか。」
「そうです。買受申込書っていうこともありますね。それを、二番手で構わないから出させてもらうんです。二番手というのは、万が一、既に契約予定で話を進めている買主さんと売主さんとの話が破談になった場合は、二番手の今村さんが交渉の場に立てるという意味ですよ。」
「買付証明書っていったって、俺は物件をまだ見てないんだ。そんなものにサインできないよ。。。」
「だから条件を付ければいいんです。」
「条件?」
「例えば、桜新町の物件を1億2500万円で買うと表明します。ただし、こんな条件がつきますよっていう感じです。」
そう言うと、畑中は今村に紙を渡した。
そこには、次のような条件が書かれている。
◇買主は、現在お話を進めている別の買主が存すること、その買主が優先交渉権を持つことを了承します。
◇契約前に、建物を見学すること、ホームインスペクション(住宅診断)を実施することを条件とします。
◇ホームインスペクションの結果、修繕に大幅な費用がかかる場合は、売買金額の減額についてご相談させていただく場合があります。
「なるほど。これなら、サインしてもいいかな。ただ、こんないろいろ条件がついてたら、売主は嫌がるんじゃないか?」
「仰るとおりですね。先行している一番手の買主が今村さんと同じような価格水準なら、この紙は即ゴミ箱行きですよ。」
「そりゃそうだな。それならそれで仕方ないよ。諦めもつく。」
「ただ、もし、先行している一番手の買主が建売業者だったら、8000万円とか9000万円という話のはずです。1億2500万円で買ってもらえるチャンスがあるなら、売主はこの条件でもトライしてみようとするんじゃないかと思うんですよ。」
「なるほど。でも、こんな紙、西京が受け取ってくれないだろう。受け取ったとしても売主に渡さないと思うぞ。」
「そうですね。そこで今村さんにもご協力いただきたいんですよ。」
「どんな協力?できることならなんでもするつもりだよ。」
「西京不動産販売さんに私が二番手の買付証明書を持っていくときに、『今村さんはあの土地、特に建物にとてもご興味を持たれており、あの建物を大切に使いたいという気持ちだけでも売主さんにお伝えしたいので、お手紙をしたためようとしていらっしゃる』って言ってしまおうと思ってます。それを私が西京に言うことについてお許しいただければ。」
「そのくらいならいいよ。是非とも欲しい物件だしね。ラブレターみたいなもんだな。」
「実際に書かなくてもいいですよ。言うだけですから。そうすれば、西京はこの買付証明書を売主に見せざるを得ないはずです。」
「なるほど。よく考えたなあ。ここまでやって買えないなら、納得できるよ。いろいろありがとうな。畑中君。」
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。
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2012年07月10日
ミニ小説〜不動産屋の背信 第十五話 大雄ホーム
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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第十五話 大雄ホーム
藤川姉妹との打ち合わせの翌日、五十嵐は城南地区で最も有力と言われる建売業者である大雄ホームへ向かった。
藤川姉妹の言葉から垣間見えるニュアンスからすれば、既に1億2500万円という数字には拘りはなさそうだ。
あとは、みかどハウスと栄建設の提示する8600万円と9000万円という数字に一旦驚いてもらい、五十嵐の努力の結果として、大雄ホームが9500万円〜9600万円程度の価格提示をしたということを藤川姉妹に認識してもらえれば、この物件を落とすことができるだろう。
そう五十嵐は考えていた。
大雄ホームは、この1年、城南地区の建売業界におけるプライスリーダーであるとともに、自己資本比率50%を誇る優良企業であった。他の競合よりも、優位に資金調達ができることから他社に比べて強気の価格を出してきた実績がある。特に桜新町は大雄ホームの地元でもありなおさらである。
この日、五十嵐は大雄ホーム仕入部長である森田と会って、建売業者としては最も高い価格を出してもらうための下地作りをするつもりである。
「どうですか?桜新町の進捗は。1億2500万円じゃあとても売れないってことが解ってきたんじゃないですか。エンドさんが出てくれば別でしょうけど、今どきそんな優良な買主もいないでしょう。」
森田は一見小柄だが、学生時代に硬式野球で鍛えたがっしりとし体から発せられる声はかなり野太く、迫力がある。
五十嵐は、びびってはいかん、と思いながら背筋を伸ばして答える。
「そうですねえ。売主さんに1億円を切るという判断ができるかどうかはまだ判りませんが、もう一息じゃないかなあと思ってます。」
「五十嵐さんさあ、前にも言ったけど、できれば9000万円ちょっとくらいにとどめてほしいんだよなあ。」
「森田部長、そうはいっても、競合先がないわけじゃないですからね。そのあたりのことは念頭においておいてくださいよ。うちだけで仕切っている案件とはいえ、あんまり安い値段で売却させるわけにもいきませんからね。建売業者として最大の価格を出せるよう準備はしておいてください。」
「競合先って、みかどハウスと栄建設だろう。あいつらとはいつも競合するからなあ。あんまりやつらにふっかけないでくれよな。」
「解ってますよ。ただ、売主は、1億円に近い数字でないと売らないと言うかもしれませんよ。」
「そりゃ無理だよ。五十嵐さんだってわかるだろう。桜新町で売れる上限っていうのがあるんだから。そこから逆算すれば、仕入れ価格の上限もわかるだろうよ。絶対にうちが買えるっていう保証付きだったとしても9200万円〜9300万円くらいまでだよ。」
「そうですか。」
と五十嵐は答えながらも、森田の口から出た金額には多少のストレスがかかっているはずだと感じた。そもそもストレートな金額をこのような腹の探り合いで言うはずはないのだ。
五十嵐はこのとき、大雄ホームには9500万円程度の価格提示をする準備があると強く確信した。
「ところで五十嵐さん、いつもみたいに、絶対に買える値段っていうのは教えてもらえるのかい?」
「今回もそのつもりです。その代わり、御社が販売する際はうちを専任にするってことでいいですよね。」
「解ってるよ。五十嵐さん、よろしく頼むよ。」
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