2012新春 金利放談ミニ小説〜不動産屋の背信 第六話 策略

2012年01月27日

ミニ小説〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約

ミニ小説 〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約


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ミニ小説 〜不動産屋の背信 第五話 専任媒介契約


五十嵐は、菜々の眼の前に書類を差し出した。


そこには「専任媒介契約」と書いてある。


おっとり型の美樹でさえも「契約書」という文字に対し、少々不安な表情だ。となれば、相手に突っ込みを入れるのはいつもの通り菜々の役割だ。


「契約書の内容について、きちんとご説明いただけませんか。」


「もちろんです。これは媒介契約書というもので、お客様が不動産の売却の依頼を不動産業者にする際の契約です。この契約を結ばないと、宅地建物取引業法上、不動産業者は買主探しのお手伝いができないルールになっています。裏面の約款は国土交通省の標準約款ですからご安心ください。」


「国土交通省が定めたものなんですね」

紙面一杯に細かい文字で書かれた約款を眺めながら美樹がつぶやく。


「そうです。どの不動産業者でも同様のひな形を利用しているはずですよ。まあ、中には勝手に書き換えている業者もいるかもしれませんが、うちは財閥系大手ですから、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ。」


確かに、この媒介契約書は西京不動産販売のロゴが入ったひな形だ。下手に改ざんすることなどないだろう。


菜々は、自分が勤める西京商事と同じグループである西京不動産販売なら、さほど心配しないでもいいだろうと思ってはいるものの、念のため聞いてみた。


「専任というのはどういう意味ですか?」


「専任というのは、弊社だけに売却活動をお任せいただくということです。他の不動産業者さんにも売却活動を依頼できる一般媒介というものもありますが、この場合、弊社としてはお客様の不動産に対して十分な広告宣伝費をかけることができないんです。また、専任媒介ならば弊社の優良なお客様だけをご紹介できます。一般媒介ですとどこの馬の骨か解らない買主さんと取引しなければならないというリスクもあります。ですから、弊社では専任媒介をお勧めしています。」



西京不動産販売からすれば、一般媒介契約では意味がない。別の不動産業者にこの売り物件を奪われては折角の収益機会を逃しかねないからだ。

特に買主探しが簡単な人気物件であればなおさらだ。本来、買主探しが楽な物件なら、広告費をさほどかける必要もないのだが、専任媒介を売主に選択させる目的で「十分な広告費をかけられる」というセールストークを使う。

さらに、専任媒介をさらに強く勧めるために、「どこの馬の骨か判らない買主」との取引リスクについて強調する。西京不動産販売以外の不動産業者が連れてくる買主は、西京としては素性が判らないという意味だが、ここにもウラがある。

実は、専任媒介でも自社で買主を見つけることができなければ、他の仲介業者に買主探しを頼ることになるため、この言い回しは、単に一般媒介を売主に選ばせないための口上なのだ。

しかし仲介業者がこんなことを考えていることなど、売主は知る由もない。


美樹が頷きながら五十嵐の話を聞いている脇で、菜々は、西京不動産販売だけに売却活動を任せるのはどうかと少々思ったが、西京グループならトラブルになるリスクはないだろうと感じていた。


「藤川様、特にご異論がなければ、こちらにご記名ご捺印ください。それから、契約期間は3ヶ月になりますので、それまでには何とか優良なお客様を見つけます。」


奈々と美樹が書類に記名押印を終えるところで、五十嵐は言った。


「ところで、買主探しのための物件資料作成のために、土地の測量図など書類が必要なのですが、お手元にございますか。」


「それならこちらにまとめてありますよ。」


奈々はファイルにとじ込まれた書類を五十嵐に手渡した。


「よろしければ本日こちらをお預かりさせていただき、セールス用の物件資料を早急に作成させてください。物件資料が出来上がりましたら藤川様にお届けしますので。その際に、この媒介契約書に弊社が押印したものを一通をお持ちしますね。」


「えっ。今日は媒介契約書にサインしてもらえないんですか。」


契約書なのだから、記名押印は同時にするのが当然だ。


「申し訳ございません。弊社はリスク管理の観点から印鑑の持ち出しが禁止されておりますので、どうかお許しください。実際、セールス活動を行うにしても物件資料が完成しないとできませんし。」


「構わないわよね。奈々。」と姉の美樹が安心しきった顔で微笑んでいる。


「そうだね。お姉ちゃん。じゃ、判りました。」


「それでは、例のチラシのお客様へのご紹介を含め、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」


こう言う五十嵐を奈々と美樹は玄関から見送った。


※この作品はフィクションです。実際の人物、団体、事件、物件などには一切関係ありません。


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